米メルクのコロナ経口薬、27社が廉価版を製造へ 低所得国向け
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「低・中所得国」といっても、それぞれの国で事情は異なると思いますが、多くの国で、様々な理由によりワクチン接種率が低い傾向があり、そのような国でこそ、経口薬が求められているという需給のアンバランスが存在します。
忘れてはならないのは、メルクの経口薬もファイザーの経口薬もいずれもそうですが、今のところワクチン未接種者への有効性しか知られていないということです。ワクチン接種後の患者に対してこれらの薬が本当に「違い」を生み出すのかは、まだよく分かっていません。
裏を返せば、日本での活躍の場は少ない可能性も十分残されています。いうまでもなく、先進国への販売価格が1治療あたり700ドル(約8万円)程度と想定されている「モルヌピラビル」が、感染蔓延期の期間限定ながら低所得国に20ドル(約2300円)で供給されることに対して、低所得国にはメリットがあります。低所得国に対する社会貢献でメルク社の評判を上げることが目的に見えますが、特許期間が十分に残っている医薬品の製品戦略的視点から分析すると、メルク社にも十分なメリットがある方法と言えます。
メルク社側にとっては、ジェネリック医薬品(=別ブランド)とすることに意味があります。ジェネリックメーカー側は、個別に販売国で承認申請を得ないと(薬事未承認のままでは)使用することは法的に不可能です。この方法により、先進国の価格を守ることができるという目算だと思います。
ジェネリック企業側にライセンスを与える条件として、厳しい制限を付けるはずですが、特にメルク社自身が承認申請を行い販売する先進国に対する販売行為を将来にわたって厳しく禁止することにより、低価格のジェネリック医薬品を高価格地域に流通させることをシャットアウトできます(並行輸入の防止)。現状、欧州など医薬品価格差が存在する地域で並行輸入ビジネスが多く存在しますが、対抗策になります。
現状、メルク社の「モルヌピラビル」は、後発の抗ウイルス薬に対して競争力があるとは思えず、先進国で優先的地位を得るには「企業努力を要する状態」と思います。そこで感染拡大時(現在)はライセンス料免除として協力することとの引き換えに、WHOライセンスによる低所得国での市場を開拓し、収束時以降にはライセンス料の支払いを求めることにより、低所得国での優先的地位を築く狙いがあると思います。
米国の承認内容(日本はモルヌピラビルのみ米国と同じ使用対象への承認済)
名称 モルヌピラビル パクスロビド
販売企業 米メルク 米ファイザー
分類 抗ウイルス薬 抗ウイルス薬
作用機序 mRNA合成阻害 3CLプロテアーゼ阻害
臨床試験成績 約30%重症化 約90%の重症化
リスク減少 リスク減少
米国の調達価格 1回約700ドル 1回約530ドル
使用対象抜粋 18歳以上 13歳以上
他の治療法が選択
できない患者HIV治療薬などでは、ビッグファーマは、批判を受けていましたから良い流れだと思います。企業の利潤の追求と社会の要請との、程よい妥協点ではないでしょうか。
関連して、塩野義の新薬は、被験者が集まらず臨床試験が遅延となっていましたが、図らずも、オミクロン株の感染が増えて、オミクロンへの有効性も測れる試験となり、アピールポイントができるかもしれませんね。
ただ、いずれの薬でも、治りきらないうちに服薬を止め、濃厚接触などあれば、耐性ウイルスの出現・伝播の可能性が高まります。