[東京 18日 ロイター] - 日銀は17─18日に開いた金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を賛成多数で決定した。同時に発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、22年度の経済・物価見通しを上方修正したが、経済の先行き見通しのリスク要因として資源価格の上昇が悪影響を及ぼす可能性も指摘した。

展望リポートでは、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の政策委員見通しの中央値が前年度比プラス1.1%となり、前回10月のプラス0.9%から引き上げられた。23年度のコアCPI見通しも前回の前年比プラス1.0%から同プラス1.1%に引き上げられた。

当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁が緩やかに進む中、プラス幅を拡大していくと見込まれるという。その後もマクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりを背景に基調的な物価上昇圧力が高まっていくことから「見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くとみられる」という。

物価の見通しに対するリスク要因は、企業の価格設定行動の不確実性、為替相場の変動、国際商品市況の動向、輸入物価や国内価格への波及などを指摘したが、リスクバランスについてはおおむね上下にバランスしている、とした。前回リポートでは物価見通しについて下振れリスクの方が大きいとしていた。

大和証券の末広徹シニアエコノミストは、展望リポートに関し「経済の先行きの見通しに対するリスク要因で、供給制約の影響がトーンダウンした一方、資源価格の動向が上がってきた」と指摘。その上で「販売価格への転嫁が円滑に進まなかった場合などの悪影響について触れるなど『悪い資源価格上昇』の可能性が考えられるようになったことは変化だ」とコメントした。

<感染症の影響注視、必要なら躊躇なく追加緩和>

政策金利の目標は賛成8、反対1で据え置きを決定した。短期金利は、引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用する。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う。片岡剛士委員は長短金利引き下げで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。

長期国債以外の資産買い入れ規模は据え置いた。当面、上場投資信託(ETF)は年12兆円、不動産投資信託(REIT)は年1800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて購入する。コマーシャルペーパー(CP)・社債は2022年3月末までの間、合計約20兆円の残高を上限に買い入れを行う。

日銀は2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%超えるまで拡大方針を継続する。

当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を講じると改めて表明した。政策金利は、現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移すると想定しているとした。

(杉山健太郎)