2022/1/13

【直撃】月20ドルで作家を助ける「執筆AI」の実力

NewsPicks編集部 記者
AIが、私の代わりに文章の続きを書いてくれるサービスがあるらしい──。
その名も「Sudowrite(シュードライト)」。ある程度の長さの文章を入力すると、その続きを提案してくれる。小説家などが創作活動に行き詰まる「ライターズ・ブロック」から書き手を解放し、よりクリエイティブになるのを助けてくれるツールだという。
半信半疑で使ってみると、その精度に驚いた。
先日掲載した、WIRED創刊編集長ケヴィン・ケリー氏のインタビューの文字起こしを入れてみたところ、メタバースに関する「未来予測」の続きを流暢な英語で提示してくれたのだ。
Is the idea to digitize the entire world? Are there things that shouldn't be digitized? Are there intangible things that could be lost in the process?

There are so many questions in there. "Should" is a word that really can't be uttered when talking about technology. Technology is always there for you to use in the way that you want to use it.

(日本語訳)

これは、世界の全てをデジタル化するという発想なのでしょうか?世の中には、デジタル化すべきでないものがあるでしょうか。その過程で失われてしまう、つかみきれない何かが。

多くの疑問が浮かんできます。技術について語るとき、"should"という言葉は出てきません。技術というのは、自分が使いたいように使えばいいんです。
他にも、私が書いた小説に、AIがフィードバックをくれるなんて機能もある。試しに、英語の授業で読んだオー・ヘンリーの「賢者の贈り物」全文(約1900語)を入れてみた。
貧しい夫妻が、互いへのクリスマスプレゼントを買うお金を工面するため、妻は美しい髪を売って時計の鎖を買い、夫は形見の懐中時計を売ってくしを買うという、行き違いのストーリーだ。
これを読んだAIは、「I thought the theme was that it is a better thing to give than to receive.(この物語のテーマは、受け取るよりも贈ることの方が良いということだと思った)」と切り出すのだから驚く。
小説をさらに深めるための問いまで投げかけてくれる。「How does Jim feel when he sells his watch? Is he doing it out of obligation or love?(ジムは、時計を売った時どんな気持ちだったんだろう?義務感から生じた行為だったのか。それとも愛?)」
AIは、小説のテーマすら理解しているのだろうか。一緒に現代文のテストを受けたら、私よりずっといい点数を取ってしまうんじゃないか。
このツールの背骨となっている技術は、2020年に登場して業界を震撼させた言語モデル「GPT-3」だ。文章生成に長け、人間が書いたものと区別がつかないほど自然な文章を紡ぎ出すことができる。
Sudowriteは、月額20ドルという強気な価格設定ながら、リリースから4カ月ですでに数百人以上が有料会員となった。
300万ドルの資金調達も完了し、Twitter共同創業者のエヴ・ウィリアムズをはじめ、そうそうたる顔ぶれがエンジェル投資家として出資している。
文章を自分の代わりに書いてくれるAIは、人の執筆活動をどう変えうるのか。AIが文章を創作できる時代、私たち人間はどこに「創造性」を見い出せばいいのか。
Sudowriteを創業したエンジニア兼SF作家のジェームス・ユー氏を直撃した。
INDEX
  • 小説家にも、AIが必要だ
  • AIが書いた「結末」に震えた
  • 月20ドルでも、数百人がサブスク
  • 物語のキャラと「会話」できる?