猶予なき日本車メーカー EV転換、産業創出の好機
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大手メディアの報道で気になるのは、自動車メーカーは一刻も早くモーター車に移行しないと世の中の流れに置いていかれる、BEVシフトの決断を急げという論調が多いことです。
本当にそうでしょうか。世界を相手にする日本の自動車メーカーです。当然、各市場の動きを注視しています。将来予測についてもコストを払ってやっています。
トヨタのように全方位で次世代車に対応できないところは他者との協業も進めています。雇用を守り成長を続けられる新業態開発にも余念がありません。
ライバルに対して乗るべき土俵には乗り、かわすべきはかわす。その見極めこそが大切ではないでしょうか。
求められるのは自動車に頼らない産業の創出と育成です。世界に軸足を移すことが必須の自動車メーカーに過度な雇用責任を負わせるのではなく、誰もがアイデアと努力で起業できる環境整備に力を入れなければなりませんね。日経新聞をはじめ日本のメディアばかり読んでいると、トヨタをはじめ日本の自動車業界は遅れているよね、ヤバイよね、という論調が多く、たしかにマズいかも???と思ってしまいます。
だけど、フィナンシャル・タイムズなど海外のメディアも毎日目を通していると、日本では先行していると思われている欧州勢もものすごく苦労していることが報道されていて、EV戦争はテスラ以外横一線であると感じます。
もちろん、今この瞬間にトヨタがテスラを蹴散らす勢いでEV市場でリードしていたら、そりゃ気持ちいいわけです。
日本のメディアが日本車メーカーに厳しい記事を書き立てるのは、日本人の多くがトヨタの趨勢を日本全体の将来に勝手に重ねていて「トヨタよ、お前もか!」となる惨事だけは絶対に避けたい、トヨタだけは頑張ってほしいというエールの裏返しだと私は見ています。実際、トヨタには世界一であり続けてほしいですし。
豊田社長がハイブリッドなどを脱炭素化へのワンポイントリリーフに活用し、徐々に完全EV化へトランジッションしていくべきという極めてまっとうなロジックは欧州勢などに先行を許してしまったことを自己正当化しているだけの理屈だと一般に理解されているフシがあります。
でも、それはまったくの誤解であり、豊田社長の例の説明は世界エネルギー機関IEAが公式に発表しているレポートにきちんと書かれている内容で、豊田社長はそれを引用しているに過ぎません。
なので、欧州がEV化を急いでいるのは、純粋なサイエンスから来る動きではなく、トヨタを、あるいはテスラを打ち負かすためのゲームのルールを変える動きにほかなりません。
かつてはバレーボールで、その後はノルディック複合で、スキージャンプで、日本が世界一になると、ことごとく日本人が不利に(欧州が有利に)なるようあからさまに恣意的なルール変更がなされ、その後何年も日本が勝てなくなるという事態が起こりました。それと同じ。
複合もジャンプも創意工夫と努力で再び日本が勝てるまでに対応したわけですが、したたかに市場で競争力を発揮できるよう日本がルールメイキングのところに入っていけるようになるといいですよね。