[ワシントン 5日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は5日に2021年12月14─15日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。その中で、労働市場は「非常にタイト」で、高インフレへの対応に向け、予想よりも早期の利上げに加え、保有資産全体の縮小が必要になる可能性があるという見解を示していたことが分かった。

議事要旨は「経済や労働市場、インフレへのそれぞれの見通しを踏まえ、参加者は総じて、従来予想よりも早期、もしくは速いペースでの利上げが正当化される可能性があるという認識を示した。さらに一部の参加者は、利上げ開始後比較的早期に、バランスシートの規模縮小の開始が適切な可能性があると指摘した」とした。

これは、この数週間の間にFRBで形成されたインフレ高進に対抗する動きの必要性に関する合意を示している。借入コストを引き上げるだけではなく、第2の手段を用いて新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中に蓄積された米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の保有量を減らし、長期金利を抑制することだ。

FRBの保有資産は約8兆8000億ドル。

CMEグループのツール「FedWatch」によると、FRBがパンデミック後で最初となる金利引き上げが今年3月になる確率は70%を超えた。

議事要旨の発表後、米国株は1日の最安値まで下落した。FRBの政策見通しに最も敏感な2年国債の利回りは、パンデミックによる経済危機が起きた20年3月初旬以来の高水準となった。

ニューヨークのレノックス・ウェルス・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、デービッド・カーター氏は議事要旨について「これはニュースだ。予想していた以上にタカ派的だ」と述べた。

議事要旨はFRBが先月のFOMCで、目標の2%の2倍を超えるインフレ率に対処するため、よりタカ派的な金融政策に移行した詳細を示している。

インフレへの懸念を示すとともに、雇用者数がパンデミック前のピーク時に比べて300万人超も下回っているにもかかわらず、公衆衛生の危機によって退職やその他の離職者が出ていることを考慮すると、経済は最大雇用とみなされるところまで迫っているとした。

「参加者は、米労働市場が非常にタイトなことを示す多くの兆候を指摘した。これには、過去最高に近い離職率や求人件数、賃金上昇の顕著な回復が含まれる」とし、「多くの参加者は、現在の改善ペースが続けば、労働市場は最大雇用に急速に近づくと思われる」と判断した。

この見解は新型コロナの感染者数が今回急増する前の12月中旬のものだが、少なくともその時点ではオミクロン変異株の拡大が「米国の経済回復の道筋を根本的に変えるものではない」と見なされたことも明らかにした。

FOMC出席者は昨年12月、パンデミック対策としての債券買い入れプログラムの終了を早めることに合意し、22年中に0.25%の利上げを3回行うとの見通しを発表した。FRBの基準となる翌日物金利は、現在ゼロに近い水準に設定されている。

昨年12月の会合時には、オミクロン変異株の拡大によって新型コロナ感染者数が増加し始めていた。

感染者数はその後急激に増加したが、公衆衛生状況の変化に伴って金融政策についての見解が変わったかどうかを示すFRB高官のコメントは示されていない。

パウエルFRB議長は来週、米上院銀行委員会でFRBトップとして2期目の任期(4年)を務める再任指名を受けたのに伴う公聴会に出席する予定。その際、経済に関して新たな見解を示す可能性が高い。