2021/12/31

【解説】NFTバブルから見えてきた未来 

NewsPicks 記者
2021年のテック界のキーワードの一つが、NFTだろう。
NFT(Non-fungible token)を意味するこの資産は、デジタル作品の「唯一無二性」を保証するものとして、アーティストやクリエイターから熱狂を生み、ツイッター創業者のジャック・ドーシーやイーロン・マスクを巻き込んで、ムーブメントを拡大していった。
2022年には、経済産業省がファッション分野で実証実験に乗り出すことも明らかになり、遅れていた日本でも、いよいよ政府までもが動くまでの動きになってきた。
そのNFTは2022年、何を巻き起こすのか。
NewsPicksでは、『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』を執筆したコインチェック執行役員で、日本暗号資産ビジネス協会NFT部会長の天羽健介氏が解説する。
INDEX
  • 2021年、NFT元年
  • 著作権は守られるか
  • チェーンをめぐる問題
  • NFTは簡単に売れない
  • コミュニティビジネスの鍵になるか
  • NFTの台風の目になる2企業

2021年、NFT元年

──2021年の前半、NFTバブルが起きました。
2021年の年明けぐらいから、NBAトップショットの高額売買事例が出てきて、注目され始めました。そこから、加速度的に取引額が増えていって、IPホルダーや取引所が続々と参入を表明されました。
NFTの基礎知識、プレイヤーやバブルが起きた理由の解説はこちら👇。
秋口になるとNFTの解説本が出版されるようになったり、流行語大賞にノミネートされたことで、一般に知られるようになりました。
この1年、市場が大きくなったことで、ガイドラインの整備が進みましたし、技術的な課題や法律的な課題が見えてきました。
──スクウェア・エニックスのようなゲームメーカーから、グッチのようなファッションブランド、吉本興業のようなエンタメまで、有名企業が、比較的早く意思決定をし、参入表明したのが、意外でした。
ゲーム業界については、ゲームの外にアイテムを持ち出したり、アカウントを売買したりできないRMTというリアルマネートレードの自主規制があります。ただ、規制が緩和される時を見越して、ブロックチェーンゲームの研究自体はしていたところが多かった。
それで参入の表明が早かったのですが、それ以外は波が来た時に、高速で意思決定されたところが多かった。
【2021年にNFT参入を表明した企業などの例】
3月
GUCCI(グッチ)、ニューヨーク・タイムズ
7月コカ・コーラ、吉本興業
11月スクウェア・エニックス(※本格的な参入を表明)、HYBE(BTSの所属会社)
12月NIKE(ナイキ)、Adidas(アディダス)、プロ野球パリーグ
など。
2021年後半は特に、我々のような仮想通貨の取引所や法律相談所へのNFTの相談が集中しました。一日に10件の打ち合わせがある時もあるくらいで、色々な方とやりとりする中で、一つの結論に至りました。
我々、NFTという手段からこの世界に入ったプレイヤーですが、結局NFTは「手段」でしかないという。
やっぱり、NFTは、コンテンツを多く管理している方々が最上位に来て、彼らが、ビジネスを広げていくための手段がNFTです。
全体のバリューチェーンとしては、まず最上位にIPがいて、彼らが持っているコンテンツに連動したNFTを発行するためのコンサルティング企業がある。
彼らは、どんな価値を持ったNFT、ユーティリティを設計するかを考えるアイデアと、発行するための技術的な支援をする人たちです。
その次に、NFTを売るマーケットプレイスがある。コンサルをしている人たちが自前のマーケットプレイスを持っている場合もあるけれど、我々のような取引所を使っている場合もあります。
そして、インフラであるチェーンを管理しているメーカーがいる。ざっくりとそんなイメージです。

著作権は守られるか

──市場が大きくなることで見えてきた課題を教えてください。