2021/12/28

【評価30倍】僕らは「脱炭素」で、もう一つの勝負をかける

NewsPicks NY支局長
日本の「グリーン・ジャイアント」になるのは、僕らだ――。
2021年のキーワードの一つとなった「脱炭素」。昨年の日本のカーボンニュートラル宣言から、米バイデン政権の誕生、そして11月のCOP26にいたるまで、世界の気候変動対策は加速の一途を辿る。
エネルギー業界だけでなく、EVに金融、農業、新たなテクノロジーまで、脱炭素マネーの追い風を受けて、急成長を続ける企業を、筆者は9月の著書で『グリーン・ジャイアント』と呼んだ。
日本では、これまでグリーン・ジャイアントの有力候補は数えるほどしかいなかったが、2021年凄まじい成長を遂げるベンチャーが登場した。
ENECHANGE(エネチェンジ)。
2015年に「電気の切り替え事業」を引っさげて創業したエネチェンジは、近年、エネルギーのDXを推し進める企業としても注目を集め、ちょうど1年前に上場を果たした。
上場時は、証券会社による公募段階の評価が低く、「事実上の直接上場」というウルトラCな手法でIPOを果たしたが、見事、その賭けに勝ち、時価総額は一時公募段階の"30倍以上"の1000億円超えを記録した。
今月は、株価高騰を追い風に、新たな資金調達にまで踏み込んだエネチェンジは、「グリーン・ジャイアント」を目指すべく、さらなる一手を仕込んでいる。その野望のすべてをCEOの城口洋平氏に聞いた。
INDEX
  • ①IRに、全時間の半分を充てる
  • ②巨人の候補は2社しかない
  • ③テスラ100兆円の真の理由
  • ④EV充電は「3段階」で稼げる
  • ⑤この3年で勝負を決める

①IRに、全時間の半分を充てる

──昨年末に取材したときは、ちょうど「事実上の直接上場」という手段を取られたタイミングでした。その賭けに勝って、株価はすさまじく伸びました。
去年の上場時は(証券会社が評価した)公募時の「時価総額」が34億円、資金調達額は5000万円という低い評価だったので、株式市場に判断してもらおうと、最小ロットだけを売り出した形でした。
そんなIPOから始まって、今年11月には一時、時価総額が1100億円を超えるレベルにまで伸びました。
12月には、次なる勝負を仕掛けるべく、新たな資金調達を実施しています。
実際に、新株を発行した12月7日時点の時価総額837億円で、調達額は42億円になりました。株価のピークからはかなり下げてしまったとはいえ、1年でそれだけ評価が変わったことは一つのポイントです。
背景には、エネチェンジが今年仕掛けてきた3つの取り組みがあります。
1つは、①海外IR(投資家情報)の徹底、もう1つは、森川さん(筆者)の書籍でも書かれた脱炭素マネーを捉えた②『グリーン・ジャイアント』の潮流、そして、最後は新事業として打ち出した③EV充電です。
──では、①から聞かせてもらえますか。
上場後、一番注力したのはIRです。
日本の証券会社にブラックボックスで決められる価値ではなく、適正な値付けをマーケットに任せるためにIPOしたので、金融市場への説明責任は徹底してきました。
僕自身、CEOとしての時間の約半分をIRに充てているほどです。
すべての開示情報が日英同時に公開される
四半期ごとに約100件のIRミーティングをこなし、約半分が海外の機関投資家です。しかも、ほぼすべて自分が出席しています。