東京農工大が女性・外国人教員を積極採用、現場も歓迎の理由
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10年ほど前より、本業のビジネスと兼業で、東京農工大学の特任教授をしています。
以前は3年ほど、学長を補佐する仕事もしていました。
東京農工大学は、とてもユニークな大学です。
例えば、東京には東京大学や東京工業大学という理系の人気校があるので、それらとの差別化で、知識の実用化にとことん拘っていたり。
以前には、東京大学や東京工業大学や京都大学を抜いて、特許収入が日本一になった年も。
そして、このニュースで女性教員の話しが出ていますが、女性という観点でも、東京農工大学は唯一無二な大学な気がします。
あまり知られていませんが(知らせる努力をした方がよいのですが)、東京農工大学の女子学生比率はとても高いです。
たとえば、工学部は、昨年の卒業生で男性443人で女性155人と、男女比が3:1なのですが、これは国立大学の工学部で女子学生比率は日本一のレベルです(末尾の大学の高校生向け動画参照)。
また、もう一つの学部の農学部は、男性168人で女性150人と、男女比がほぼ1:1です。
結果として、女性高校生の理系進学率はまだ日本全体で低いのですが、東京農工大学はその平均を大きく上回り、全体で3割以上が女子学生です。
もちろん、これらは、今日に始まったことでもありません。
この記事でも書かれているような長年の大学改革の取り組みの歴史と、その取り組みを支える多様性を重んじる価値観によるものな気がします。
なので、今回、女性教員の話しが出ていて、いま始めた取り組みのようにも思われるかもしれませんが、歴代の大学関係者によるとても長い大学改革の取り組みの一環だと言える気がします。
https://youtu.be/yQm-IJnFBXY
注目のコメント
うちも「総論賛成各論反対」というか「笛吹けど踊らず」というか…。テニュア(任期なし=定年までいられる職)に就くには20代後半から30代の業績が一番重要なんですが、そこに出産育児が重なるため、女性は論文数が少なくなりやすく、差が出てしまうケースが多いようです。
一般企業でも同じなのですが、女性管理職の少ない職場は、人事評定を「仕事の累積」でやってしまうところが多いんです。これをやってしまうと「育休1年」のX(バツ)がずっとついて回ります。育休明けの年の査定が低いのは仕方ないとしても育休5年後、10年後はその人の能力で評価しなきゃいけないのに、累積で計るために、Xが消えない。30代の論文「数」が基準となって、人事で女性が不利になるのはそれと同じ構図です。
私はテニュアをとってから育児体制に入って、仕事にブレーキを踏んだのでキャリアにあまり影響しなかったのですが、女性は出産の時期がちょうどテニュアの人事の時期とかさなるので、周りの優秀な人たちを見ていても気の毒です。JSTのダイバーシティ推進室が、研究者に対して実施したアンケート調査(男性約760人、女性約500人)によると、
「公的資金による研究開発プロジェクトで『女性枠』を設ける」ことに対する賛否について、男性は賛成21%、反対55%と過半数が反対。特に20〜40代の若手研究者は反対が多かったようです。
いっぽう女性は44%が賛成で、反対の25%を上回りました。✳︎
女性研究者の積極採用に動く大学は増えており、これは大変重要な取組ですが、研究職に就くのが難しいのは男性でも同じです。
特に厳しい環境に置かれている若手男性研究者は、女性が「特別視」されることに抵抗感をもってもおかしくないです。
どちらか片方が不利にならないようにする工夫と、審査過程の透明化が必要と思います。
また、根本的には出産・育児と介護負担の女性への偏りが最大の問題と思いますので、そのあたりのケアを大学として行うことが、研究支援そのもの以上に重要だと思います。
✳︎ https://www.jst.go.jp/diversity/pdf/question_result.pdf