オミクロン株“重症化 入院リスクはデルタ株より低い傾向”WHO
コメント
注目のコメント
オミクロンに関しては、ここに示されるように少し安心材料になるような初期のデータが出てきています。
と同時に、合わせて確認しておきたいこともここに書き記しておきます。「重症化リスクが低い」とされたのは、南アフリカで入院した患者のうち重症化したのが3割に止まったからというのがその理由です。
デルタではこれが6割だったそうで、割合としてだいたい半分に減っているようです。しかし、オミクロンへの過剰反応として、入院総数が増えた(すなわち分母が増えた)可能性なども考慮しておく必要がありそうです。
また、それでも3割が重症化しているということもしっかりと認識しておきたいところです。仮にこの評価が真実だとしても、デルタの際の倍以上の人に感染が広がり、入院患者数が増えれば、確率は低くとも総数は増えるポテンシャルがあります。
さらに、新型コロナ感染症の「軽症」についても改めて確認しておきましょう。「軽症」という言葉からくるイメージとは異なり、38度や39度を超えるような熱が数日続き、寝込む状態を「軽症」と呼んでおり、4人に1人程度の割合で6ヶ月以上続く後遺症が残る病気でもあります。
このようなことも再確認しつつ、冷静に情報を受け止める必要があると思います。オミクロン株についてはこれまでのところ、重症化率が比較的低いことを示唆するデータがいくつか出ていますが、同時に以下のようなバイアスがあるため解釈には注意が必要です。
1、発症してから重症化するまでタイムラグがある
一般的にコロナは発症してから重症化するまで1週間程度のタイムラグがあります。オミクロン株が報告されてからまだ日が浅く、重症化率が過小評価されている可能性があります。
2、入院の閾値が異なる
「入院したオミクロン株の患者で重症化した症例は約3割にとどまっており、6割以上が重症化していたこれまでの状況よりも良い」という報告が根拠になっています。感染が落ち着いている時期は軽症患者でも入院対象になっていましたが、感染が拡大すると入院の閾値があがり、重症化した患者ばかりが入院するようになるため、当然重症化率や死亡率が上がります。オミクロン株の流行前は、南アフリカでもコロナの流行は落ち着いていたため比較的病床に余裕がある状態と考えられ、またオミクロン株への警戒からか入院の閾値が更に下がっていて、相対的に重症化率が下がっている可能性もあります。
結論としては、「まだデータが十分出揃っていないため、今後数週間の動向に注目する必要がある」ということになると思います。オミクロン株は従来の新型コロナウイルスと比べ、遺伝子配列の変異部位が極端に多かったことから、「これまでの新型コロナウイルスとは大きく異なる性質を有する可能性」とこれまでの新型コロナウイルスと比べても「異様なまでの感染力があった」「ワクチン接種者が容易に感染している(既存ワクチンで免疫が得られにくい可能性)」という事実から非常に警戒されていた経緯をもちます。
病毒性についてはもともと不明で、万が一にもこれが高かった場合はとんでもない事態を引き起こすことから「危機管理」の意味で非常に強い感染防止策がとられています。今回のWHOのほか、米国(主席医務官)、EUのコメントでも、現在までのところ「オミクロン株での重症化傾向の程度は高くない」と伝えており、今後2~3週間程度、実際に治療が必要な患者数および重症化する患者数の増加がなされないことの確認によって、現在は各国が最高ランクに位置付けている「オミクロン株に対する警戒ランク」は各国の判断で下げられると思います。各国にはブレーキとアクセルをタイムリーに操作することが求められると思います。
ただ、オミクロン株の変異部位が多いことにより従来のワクチンの効果が減弱していることは強く示唆されているようですので、今後オミクロン株を基準とし(非常に強い感染力を維持しながら)さらなる変異で強い毒性も獲得した変異が起こった場合への対応策との位置づけとして、オミクロン株の変異に対応するワクチン開発は継続されると思います。
また、オミクロン株の脅威が当初の見立てほどでなかったとしても、デルタ株などへの対応として接種後の一定期間で免疫が減弱するという事実からしても「3回目を含めてワクチン接種が急がれる」とする世界各国の保健当局の判断に違和感はありません。