ファイザーかアストラ接種後にモデルナで高い免疫反応=英研究
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興味深い研究です。ランセットに掲載された論文はこちらのようです。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02717-3/fulltext
記事のタイトルはややミスリーディングかもしれません。「交差接種をした方が良い」というのが主旨ではありませんのでお気をつけください。
今回の研究結果をうけて、ファイザーやアストラゼネカを最初に接種した人たちがブースターショットを受ける際に、「モデルナでも同等の効果が期待できるため、供給があれば柔軟に対応しよう」、という方針になってくるかもしれません。記事の試験は、「中和抗体が高くなった(=液性免疫の高まり)」「T細胞が活性化した(=細胞性免疫の高まり)」で見ています。両群比較で感染症の発症が抑えられたという「臨床効果の証明」には至っていません。
記事(オリジナルは著名医学誌ランセット誌)によれば、
◎「アストラゼネカかファイザー/ビオンテック製」→「モデルナ製」(比較対象は「アストラゼネカ製」→「アストラゼネカ製」)
〇「アストラゼネカ製」→「モデルナかノババックス製」(比較対象は「アストラゼネカ製」→「アストラゼネカ製」)
〇「ファイザー/ビオンテック製」→「モデルナ製」(比較対象は「ファイザー/ビオンテック製」→「ファイザー/ビオンテック製」)
△「ファイザー/ビオンテック製」→「ノババックス製」(比較対象が「アストラゼネカ製」→「アストラゼネカ製」には勝り、「ファイザー/ビオンテック製」→「ファイザー/ビオンテック製」には劣る)
なぜこのような結果になるかの理論的な説明は難しいと思います。
医薬品においては、通常は承認が取れている用法・用量を守ることが求められます。基本的に承認されていない医薬品を使用することはできませんが、例外的に医師の判断により使用することは可能です。しかしその場合は、あえて使う理由が必要ですし、「理由がないのに使う」「患者を選ばずに一律に使う」使用方法をとった場合は裁量権があろうとも責任が問われると思います(最近の新型コロナ感染症へのアビガンの一律投与のケースのように)。
その意味で、記事で紹介されている臨床試験は待望されていたものでしょう。ワクチンに関しては同じ種類が用意できない場合、「接種しないよりも他種を代替にすべきか」との議論に示唆を与える研究になり、止むを得ない状況における混合接種に組み合わせの根拠を与えます。
しかしながら、臨床試験レベルでの検証ではないため精緻な試験では結論が変わる可能性が十分にありますし、これらの組み合わせにより稀に発生するかもしれない重大な副反応を検出できる精度で実施されてもいません。研究成果は同じ薬剤が用意できない場合の参考学術資料の位置付けとして利用される位置づけです。