2021/12/8

【脅威】一般市民に飛び火する、国家間の「サイバー戦争」

INDEX
  • 狙われた「ガソリンスタンド」
  • 市民が「人質」になる日
  • 乗っ取られたビルボード
  • 政府高官が異例の謝罪
  • 省庁内部に内通者か
  • 個人情報がSNS上に拡散
  • 多発する便乗犯罪
  • 紛争は新たな局面へ

狙われた「ガソリンスタンド」

イランとイスラエルのサイバー戦争の砲火に、大勢の一般市民が巻き込まれている。
イランの首都テヘランでは数千カ所のガソリンスタンドがダウン。ある歯科医はガソリンを求めて何時間も車を走らせ、4カ所のスタンドで長い列に並んだが、徒労に終わった。
一方、イスラエルのテルアビブでは著名なキャスターが災難に見舞われた。彼の性生活の詳細が、LGBTQの出会い系サイトから盗まれた数十万人分の情報とともに、ソーシャルメディアにアップロードされたのだ。
イスラエルとイランは長年にわたり、陸、海、空、さらにはコンピュータで事実上の戦争状態が続いているが、狙われるのは基本的に軍や政府機関だった。しかし今、戦争の標的は、かなりの規模で市民に広がっている。
10月末にはイラン全土で給油システムがサイバー攻撃を受け、4300カ所のガソリンスタンドが麻痺。完全に復旧するまで12日間かかった。攻撃にはイスラエルが関与していると、アメリカの2人の防衛当局者は語る(機密情報の分析に関連するため匿名)。
攻撃の数日後には、今度はイスラエルの主要な医療施設とLGBTQ向けの人気出会い系サイトがサイバー攻撃を受けた。イスラエルの高官はイランの仕業だと指摘している。
給油ネットワークがダウンしたテヘランでは、ガソリンスタンドに自動車が長い列をつくった(Fatemeh Bahrami/Anadolu Agency via Getty Images)

市民が「人質」になる日