バイデン米政権、週内にも北京五輪の「外交ボイコット」発表か
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北京オリンピックの外交的ボイコットは、本来は、オリンピック憲章に定める人権尊重の精神にそぐわない状況のある国での開催について、問題を提起し人権尊重を求めるために行われるものです。
一方で、米国が主導すれば、中国が米中対立の文脈でこれを捉えることは避けられません。中国にとって、新疆ウイグル自治区におけるムスリム少数民族の弾圧や彭帥氏の事案についても、人権問題ではなく、共産党の権威を守り統治を継続するための政治問題です。2014年に習近平総書記が提起した総体的国家安全保障観でも、最初に出てくる、あるいは一番大きく取り上げられるのが、共産党の統治を守る「政治安全保障」です。
欧米諸国が人権問題について議論しようとしても、中国には、欧米諸国が中国の発展を妨害し、ひいては中国共産党の統治を覆すための口実にしか聞こえないということです。そうすると、外交的ボイコットは中国が自ら政治問題化している(あるいは最初から政治問題として捉えている)ということになります。そして、中国の発展を妨害するための口実だと考えれば、これに対して経済制裁等を含むあらゆる手段を講じようとするでしょう。
米国にも中国に対する批判を強めるための理由の一つという捉え方はあるでしょう。しかし、人権や民主という価値観を用いて中国に圧力をかけたいというバイデン政権の思惑とは別に、米国内には純粋に人権問題を解決したいと考える人も多いでしょう。
しかし、人権問題を提起しても、中国にはそもそも全く響かないのだとも言えます。中国がそのような認識を持つ以上、外交的ボイコットを行った際に中国がどのような対米政策を採るのか、米国も慎重に分析せざるを得ません。結局、人権問題をどのように解決するのか、という本来の問題とは別の論理で外交的ボイコットが決定されることになるのは残念なことですが、外交の中では一般的に見られる状況でもあります。