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しかし、内閣府が試算する経済対策効果を鵜呑みにすると、引き上げすぎになるでしょう。
コロナ禍の昨年度は▲4.4%、実額にして約24兆円実質GDPが落ち込んでいますから、経済活動が正常化してコロナ禍前の水準に戻るだけで+4.6%成長する勘定です。落ち込みより戻りの率が大きく出るのは分母が小さくなっているからです。
35兆9千億円の補正予算が今年度と来年度のGDPを5.6%引き上げると政府は見ているとのことですが、35兆9千億円はGDPの6.8%に当たります。政府が借金で賄ってカネを注ぎ込んだほどにもGDPは増えないということです。こうしたことの繰り返しが、2015年度から2020年度までの間、政府が954兆円も借金を増やしてカネを注ぎ込んだにも拘わらずGDPが12兆円しか増えなかったという現象を起こすのです。
対策効果を大きく見せたい政府の予測が民間エコノミストの平均より高くなるのは毎度のことですが、いずれにしても、他に攪乱要因が無い限り、日本経済がコロナ禍前の水準を取り戻すまでは高めの成長率が続きます。しかし、日本が本来的な生産量、つまりコロナ禍前の水準を取り戻したあとは、潜在成長率が高まらない限り、日本は日本の実力である0.1%前後を挟んで上に行ったり下に行ったりの長期の停滞に戻って行くのが必定です。そういう意味では、来年度の成長率を1%とみるか2%と見るかは50歩100歩。外国人を大量に入れでもしない限り労働力の増加が限界に達しているのは明らかですから、コロナ禍対策が日本国内の設備と技術の伸びを促さない限り中長期的な成長率はゼロパーセント近傍に留まって、来年度の成長率が高ければ先の落ち込みが大きくなるだけの話です。
欧米諸国がデジタル化や脱炭素といった設備と技術の伸長にカネを投じる所以です。国民への分配で需要を生むことだけに熱心な我が国の対策は、来年度の成長率が1%であろうと2%であろうと、足元の回復を早めるだけに止まります。巨額の財政支出が中長期的な成長率を高めないのは今回もたぶん同じです。
総じて、モルヒネを撃ち続けるフェーズは終わったと思う。実際ある程度は引き上がるだろうし、やらざるを得ないだろうが、公共投資の対象を大きく変えないと中長期はかなりマズイ状況にあると思う。
米国経済については、昨日ゴールドマンサックスが経済成長率見通しの下方修正を行ったとも報じられていました。
【ゴールドマン、米成長率見通し下方修正-オミクロン株が若干の下押し】
https://newspicks.com/news/6420933
日本は今年度の補正予算案を編成した新たな経済対策の効果に期待しているのですね。また、オミクロン株については、それほど懸念していないということなのかも知れない。