[東京 30日 ロイター] - 経済産業省が30日公表した10月の鉱工業生産指数は、部品不足が響いていた自動車の挽回生産などで4カ月ぶりのプラスに転じたが、 調査時点では新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の影響は織り込まれておらず、先行きの下振れリスクは多い。市場関係者の間では景気の下振れリスクが指摘されている。ロイターが集計した民間予測中央値の前月比1.8%上昇で、公表された数字はこれを下回った。

<自動車増産でも企業マインドは弱気、基調判断据え置き>

鉱工業生産指数は新型コロナの影響で急激に落ち込んだ昨年春以降、緩やかな回復基調が続いていたが、今年7月以降は半導体や部材の不足が響き、3カ月連続の減産となっていた。10月は増産に転じたものの、「これまでの低下を回復するほどの上昇にはなっていない」(同)。

自動車など輸送用機械が前月比で15.4%上昇、半導体製造装置などの生産用機械が同4.2%上昇、汎用・業務用機械が同3.2%上昇だった。自動車は半導体不足や東南アジアでの感染拡大による部材供給不足の影響が緩和され、4カ月ぶりの増産となった。

一方、無機・有機化学が同3.3%低下、鉄鋼・非鉄が同2.3%低下、電子部品・デバイスが同1・0%低下となった。電子部品の減産は在庫要因で、経産省では「スマートフォン向け需要が低下しているかどうかは判断できない」としている。

企業の生産計画を集計して算出される生産予測指数は11月が前月比9.0%上昇、12月が同2.1%上昇だった。自動車などの挽回生産が続く見通しだが、予測には上振れ傾向があり、これを補正した試算値は11月は同4.2%上昇となっている。

経済産業省は生産の基調判断を「足踏みをしている」に据え置いた。

生産計画を上方修正している企業の割合から下方修正した企業の割合を差し引いた生産活動マインド指標(DI)は11月がマイナス10.2で、10月のマイナス13.0から上昇しているが、マイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いと経産省では判断しており、「企業の生産マインドはまだ弱気」(同)とみている。

<供給制約から景気下振れにフェーズ変化の可能性>

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「自動車の挽回生産は想定通りだが、化学や鉄鋼など素材系が弱くなっており、これまでの供給制約による減産ではなく、景気・需要の下振れにフェーズが変わりつつある可能性がある」と懸念を示している。

大和証券の末廣徹シニアエコノミストは「電子部品の減産については、巣ごもり需要の一服などが想定される」と分析している。

前週南アフリカで発見されたオミクロン株の影響も不透明要因だ。大和証券の末廣氏は「人の国際移動が制限されることは世界経済にネガティブで、景気下押し要因」と語った。

*経産省の発表資料は以下のURLでご覧ください。

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html [http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html]

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