男性ホルモンつくる細胞をiPSで作製 男性の更年期障害、治療に光 神戸大
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iPS細胞(induced pluripotent stem cells: 人工多能性幹細胞)は、分化の際に特定の条件を与えることにより様々な細胞に分化することがわかっているため、万能細胞とも呼ばれています。iPS細胞の発見については山中伸弥教授らの研究の成果でよく知られています。
iPS以前にも同様の機能をもつ細胞は知られていました。それはES細胞(embryonic stem cell: 胚性幹細胞)と呼ばれるもので受精卵からつくられます。しかし受精卵=胎児を原材料にすることから、根本的に倫理的な問題が拭えないとされ研究は進みませんでした。したがって、現在はiPS細胞が当該用域の研究の主流になっています。受精卵(ES細胞)は種々の臓器に分化して生物を作りますが、それと同じようにiPSには広範囲の可能性があります。
iPS細胞由来の臓器(細胞)による治療での問題点とされるのは、同細胞から作成された臓器が時期をおいて癌化する可能性があるとされているためで、今後これの克服が完全になされればかなり広い領域での実用に期待がでてくると思います。逆に今後もなされなければ、応用の可能性はそのリスクを受け入れた上でも治療をしたほうが良い領域に限られるはずです。
利便性を重視してこのiPS細胞由来の細胞をヒトに移植してホルモンを出させるのか、ホルモン自体を投与するのかの選択になりますが、先の懸念を想定に入れるとホルモン産生細胞の移植はiPSの応用領域としては、現状どうしても難しい領域に思えます。一方で、当研究は少なくとも細胞分化の条件といった技術力の蓄積につながり科学に大きく貢献しています。今後の発展に期待します。男性ホルモンであるテストステロンは、男性の健康に重要な役割を果たすことがわかってきています。女性では閉経を機に女性ホルモンであるエストロゲンが極端に低下しますが、男性では加齢と反比例して低下していきます。この加齢に伴うテストステロンの低下によって様々な症状を引き起こすことが知られており、これを総じて男性更年期障害と呼びます。近年注目されている概念で、うつ、性機能低下、認知機能の低下、骨粗鬆症、心血管疾患、メタボリックシンドロームなどと関連することがわかっています。
この治療にはこれまでホルモン製剤の注射などが行われてきましたが、iPS細胞からライディッヒ細胞を作成し、テストステロンをつくることができれば治療方法も変わってくるかもしれません。なお、テストステロンは前立腺がんを悪化させる作用があることから、泌尿器科など専門家の管理のもとでの使用が推奨されています。