2021/11/28

【提言】認知症の課題解決は、デザイナーの仕事だ

issue+design 代表 慶応義塾大学大学院特任教授
高齢化が進み、今後、日本では認知症の人が増加していく。この社会課題にどう向き合っていくかを考えるには、認知症の人が抱える生活上の困難や課題をよく知ることが欠かせない。
デザインの視点から認知症に向き合う筧裕介氏による連載の第4回は、認知症のある人が日常的に直面する、注意や手続きに関するトラブルを解説する。
認知症そのものの理解を深めるとともに、当事者の視点から課題を捉えるとはどんなことかを考えるきっかけになるはずだ。

注意・手続きのトラブル

高齢化に伴い認知症のある方が増え、認知症が誰にとっても身近な問題となりつつあります。
そんな認知症の課題解決のデザインを実施するためには、認知症のある方ご本人の抱えている課題やニーズを深く理解する必要があります。
そこで、私が運営に参加する認知症未来共創ハブでは、認知症の当事者の方へのヒアリングを重ねました。
その結果から「本人が何に困っているのか」「本人が生きる世界で何が起きているのか」という視点で、認知症によって生じる心身機能の主なトラブルを「記憶」「五感」「時間・空間」「注意・手続き」の四つに分類しました。
連載4回目では、「注意・手続きのトラブル」について詳しくみていきます。
『最新心理学事典』(平凡社)によると、注意とは、「一部の刺激を取り入れ,それ以外の物事を排除する心的過程や能力のこと」を意味します。
私たちは日常生活において、目の前の人やモノに注意を向けたり、複数のことに自分の注意を振り分けたり、逆に注意を外したり、といった「注意の取捨選択」をしながら暮らしています。
こうした注意の取捨選択が思い通りにできなくなることで、日常生活で直面するのが「注意・手続きのトラブル」です。