2021/11/18

【新】資本主義の次なる「フロンティア」はどこにある?

NewsPicksエディター/音声事業 プロデューサー
経済格差の拡大を受けて、先進諸国では若者を中心に「脱・資本主義」の声が高まっている。しかし本当に、資本主義は行き詰まってしまったのか。
今年9月に刊行された『アイデア資本主義』(実業之日本社)は、「フロンティア」という概念をキーに、資本主義というシステムの本質と、今後のかたちを読み解いた一冊だ。
著者の大川内直子氏は、東京大学大学院で文化人類学を学ぶなかで、人類学の分析手法をビジネスに応用することを着想。
修士課程修了後はみずほ銀行を経て、アイデアファンドを設立。クライアント企業とともに、文化人類学の知見を生かした事業開発や製品開発を行っている。
大川内氏は、資本主義は今日よりも良い「未来」のために現在を抑制するという、人間特有の行動と深く結びついていて、別の経済体制に切り替えるのは容易ではないと指摘する。
しかし21世紀に入り、資本主義が自らを拡大していく上で源泉としてきた「フロンティア」が消滅しつつあり、現在は新たなフロンティアとして「アイデア」が立ち現れているというのが、本書の提唱する「アイデア資本主義」の骨子だ。
これまでの資本主義が目指してきたフロンティアとは何なのか。そして、「アイデア」が駆動する資本主義はどんな姿をしているのだろうか。
大川内氏のコメントも踏まえて、本書の中身に触れていこう。
INDEX
  • 現在に我慢して未来に投資する
  • 空間のフロンティアは残りわずか
  • 企業活動は永続するのが前提
  • アイデアが「主」になる時代へ

現在に我慢して未来に投資する

資本主義はこれまで「フロンティア」によって発展してきた。
たとえば大航海時代にヨーロッパ人が競い合うように新大陸を目指したのは、そこに自らの富を増大させる余地があると考えたからだ。
しかし、航海には大きな危険が付きまとうだけでなく、投資を行うためには、それまでの生活で自らを律して富を蓄積する必要があった。