2021/11/16

【逆転】働き手がルールを作る「ワーカーズエコノミー」の時代

INDEX
  • 22歳の店員が掴んだ「勝利」
  • 「働き手有利」な求人が急増
  • 「物言う従業員」が会社に挑む
  • 「解雇」と背中合わせの交渉
  • 働き手の勢いは「今だけ」なのか
  • 「古い企業」も変わらざるを得ない

22歳の店員が掴んだ「勝利」

ノースカロライナ州アッシュビルにあるソニック・ドライブイン(ハンバーガーチェーン)の店舗で、ゼラ・ロバーツ(22歳)は最も優秀なウエイトレスの一人だとマネージャーから評価されていた。
それでもパンデミックの間は、この仕事を続けることができるだろうかと不安になったと彼女は言う。
店に来る客はルールに従わず、マスクを外すこともあった。基本給はたったの時給5ドル。そして2020年11月のある日の午後、ホットドッグを渡す際に、男性客から顔に向かってせきをされた。ロバーツは家に帰って、泣いた。
(Don & Melinda Crawford/Education Images/Universal Images Group via Getty Images)
何人かの同僚は仕事を辞めた。勤務時間中にそのままいなくなることもあった。ロバーツには、マネージャーが店のスタッフを確保しようと大変な苦労をしていることがわかっていた。だから、辞める代わりに嘆願書を書いた。
ロバーツが訴えたのは、ウエイターやウエイトレスがチップを受け取りやすくなるような仕組みをつくってほしいということ。数週間後、マネージャーは仕事中のロバーツを脇に連れ出した。クレジットカードでチップが払えるように、ソニックのアプリの仕様を変更したという。
家に戻ったロバーツと彼女の友人たちは、古い労働組合ソングを大声で歌って祝った。
「働き手はうんざりしていますし、飲食店は人集めに必死です」と、ロバーツは話す。「人手が足りないということは、私たちの価値は以前よりも高いということ。つまり、私たちはこれまでになかったような力を手にしているのです」