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年金は支給開始を1か月遅らせるごとに月額0.7%増えます。10年遅らせると0.7×12ヵ月×10年=84%増える勘定です。これを元に試算すると、いつ年金を受け取り始めても、受け取り開始から12年を経過すると遅らせる方が有利に転じることが分かります。「75歳から受給して年金額を最大限増やしたとしても、65歳から受給した場合よりトータルで多い金額を貰うには、86歳より長く生きなければなりません」とありますが、75歳から12年経過した87歳で逆転しますから、86歳より長く生きろということになるわけです。
2020年の日本人の平均寿命は女性87.74歳、男性81.64歳ですから、女性は75歳まで受給開始を遅らせても元が取れますが、男性は70歳を超えて遅らせると損する可能性が高まります。厚労省の狙いはまさにこれで、多くの高齢者が受給開始を70歳以上まで遅らせてくれたら年金の支給総額が減って年金財政が楽になる、そして70歳を超えて受給するのが普通になると、現在の65歳の支給開始年齢を引き上げることが出来る、というところにありそうです。
しかし、生活に余裕のない多くの高齢者は65歳から受け取らざるを得ず、一部の富裕層が受給開始を遅らせることになるのが現実でしょう。生活に余裕があってジム通いするような富裕層ほど一般的に長生きですから、富裕層は多額の年金を受け取りながら長生きし、今回の措置で支給総額を減らす厚労省の思惑は外れそう。そして癌が克服されて日本の平均寿命が飛躍的に伸びるようなことになれば、厚労省の思惑に反して年金財政は更に悪化することになりそうです。当面は年金支給額が減って年金財政が楽になりますが、今回の改定で年金の未来がさらに暗いものになる可能性は高かそうです。
そうした改定ですから、生活に余裕のある人は受給開始を遅らす方が、得する可能性が高いです。ただし、受給開始を遅らせると扶養家族のための加給年金が受け取れなくなること、マクロ経済スライドで年金額が減って行く分は補償されないこと、は損得計算にあたって要考慮。
私が新入社員だったころ、年金の支給開始年齢は60歳でした。それが今では65歳です。年金支給開始年齢の後倒しを認める背景には、支給開始年齢をいずれ70歳まで繰り下げて、支給額そのものも減らす意図が隠れています。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tkp/pension-simulation/
受給は遅らせず一定額を貯金できると、精神的に楽なのではと思います。
平均寿命で考えるとちょっとイメージが変わります。令和元年の国内の人口統計データからは65歳の平均余命は男性19.8年、女性24.6年です。
あと、参考にしていただきたいものとして、健康寿命は平均で10年ほど寿命より短いとされています。(死ぬ前の10年間はいくらかの介護が必要になります)
ご自身で使うのか、家計の足しにするのか、にもよるのかもしれません。
なお、「年金がなくなると困るからできる限り延命してほしい」というのは実際に聞かれることもあります。
併給禁止があるので、配偶者の分を生存配偶者がダブルでもらうことはできません。
受給を繰り下げさせて支出を減らし、歳をとっても働く人を増やし、年金財源の枯渇を防ぐのが目的です。
受給できるときに受給しておくのが一番です。
誰にも分からない寿命を相手に損得計算をすることは不毛だと考えています。
→個人的見解