2021/11/22

日本ブランドは世界で勝てるか。新鋭AI企業が見る、越境ビジネスのポテンシャル

NewsPicks Brand Design Senior Editor
日本のD2Cブランドよ、世界の市場を狙え──。消費者の行動が多様化する今、モノの売り方が大きく変化している。国内の狭い市場にとどまらず、世界の消費者へ届けるためには、どんな施策が効果的か。

今、台湾でインフルエンサーマーケティングを先導するのが、AIテクノロジー企業iKala(アイカラ)が運営する「KOL Radar」だ。

日本でも、ヒトを起点とするマーケティングはブームだが、KOL Radarは最新のAI技術を駆使。消費者の信頼を裏切らない、効果的な施策を強力にバックアップする。

SNSやインフルエンサー活用における、グローバルでの共通点・相違点は何か。日本のD2Cブランドが、海外進出を成功するための要素は。D2Cのブランド戦略に詳しいTakram佐々木康裕氏と、iKala社CEOセガ・チェン氏、COOケニス・チェン氏が対話。AIによって世界のマーケティングの常識を変える、iKalaの思想とそのプロダクトに迫る。

その投稿は信頼できるか? 消費者の厳しい目

──近年、日本でも、インフルエンサーマーケティングが盛り上がっています。しかし、商品の無作為なバラマキや、作り物感の強い投稿が消費者の拒絶反応を生み、ブランド側が意図しなかったネガティブな結果につながっているものも少なくないように感じます。佐々木さんは、インフルエンサー活用をどうお考えですか。
佐々木 大前提として、インフルエンサーマーケティングは非常に大切だと思っています。
 なぜなら近年、消費者はブランドが言っていることではなく、ブランドについて“語られていること”を重視する傾向がより高まっているからです。
 僕もさまざまな企業のサポートをしていますが、ブランドのグロースにもっとも寄与するのが、実はインフルエンサーだったということは少なくありません。
 その一方で、消費者サイドも、インフルエンサーマーケティングが流行っていると知っているため、「これは宣伝ぽいな」と防御的な反応を見せることがある。
 だからこそ、勧められている商品やサービスが、インフルエンサー本人のライフスタイルや過去の言動、投稿内容とマッチしているかどうか、一貫性はあるのかが非常に重要です。
セガ おっしゃるように、インフルエンサーの投稿が単なる商品説明のようだと、消費者は警戒しますよね。
 我々もインフルエンサーの発信において、もっとも重要なのは「信頼性」だと考えています。
佐々木 まさにその通りで、最近は消費者が求めるものが「カッコいい」や「かわいい」だけではなく、ブランド自体への信頼性へと移り変わっている。
 このブランドは信頼できるか、ブランドに関するインフルエンサーの発言は本物なのかが、とてもよく見られている印象です。
 “Authentique”や“Genuine”など、「偽りのない本物」「確実なもの」という意味の言葉が、ブランドを示すキーワードとしても際立ってきています。
 投稿者が、本当に心からよいと思って勧めているのかは、どんどん厳しく見られるようになりましたね。

AIで最適なインフルエンサーを見つけだす「KOL Radar」

セガ その傾向は、台湾や東南アジアでも変わりません。
 我々、iKalaは「AI化による競争力の向上」をミッションに掲げるテクノロジーカンパニーです。
 D2CブランドをAIや機械学習技術でサポートし、企業や組織はもちろん、個人でもAI技術の恩恵を受けられる社会を実現したい。
 その思いのもと、SNSインフルエンサーのビッグデータを分析し、新たな市場開拓を支援する「KOL Radar」を運営しています。
 KOL Radarは、アジアをリードし台湾最大の実績数を誇る、インフルエンサーマーケティングのプラットフォームです。
 ここでは、台湾、香港、マレーシア、タイ、日本などで活躍する100,000人を超えるインフルエンサーリストと、1億件を超えるFacebook、YouTube、Instagram、TikTokのリアルタイムのSNSデータを網羅しています。
 世界のインフルエンサーたちは、毎日インターネット上に写真、動画、テキストを投稿しています。
 これらの膨大なデータも、キーワード読み込みや画像スクリーニングなどのiKala独自のAI、機械学習技術があれば、瞬時に収集・分析することができます。
 その結果に基づいて、どのインフルエンサーがクライアントの製品やサービスともっとも相性がよく、PRの点で最適かを、定量的な数字に基づいてご提案しています。
ケニス AI分析では、Facebook、YouTube、Instagram、TikTokの中で使われている言葉や投稿内容から、どれくらいリーチがあるか、エンゲージメントはどれくらいなのかを予測できます。
 KOL Radarに蓄積されたデータから、「この投稿にはどれだけ反響があるか」が予測値として見えてくるのです。
 また、動画の音声データの分析機能もあり、どれくらい商品に対するコメントがあり、前向きな内容なのか、ネガティブな内容なのか、投稿した内容との関連性はどれくらいあるかもすべてAIが分析し、定量的な最終結果が出てきます。
 もちろんすべて、日本語にも対応しています。

フォロワー数だけのマーケティングはやめよう

佐々木 すごいですね。商品やサービスそのものとターゲット層によって、どのチャネルでPRすべきかは大きく変わります。
 それもすべてチャネルごとに分析し、最適なものを導き出せるのでしょうか。
ケニス そうですね。KOL Radarは、Googleの検索機能と同じように考えていただくとわかりやすいと思います。
 KOL Radarのプラットフォーム上ではキーワード検索ができ、各チャネルでタグをつけて分析しています。自社製品にふさわしいチャネル、インフルエンサーを選ぶことができるんです。
佐々木 なるほど。フォロワー数の多さといった目に見える指標だけではなく、届けたい商品やサービスとの「相性」をデータ化し、定量的にインフルエンサーを導き出せるんですね。
 日本のインフルエンサーマーケティングは、まだまだ、とても主観的で、客観的なデータに基づいて判断されていない実態があります。
「フォロワー数が多いこの方に、これくらいの期間やってもらおう」と、担当者の感覚で決めてしまうことも少なくない。
 選ぶ基準が曖昧なので、分析もしづらく、結局うまくいったのかどうかの効果検証も難しい。
 iKalaのサービスは、まさに今、必要とされているものなんじゃないかと思いました。
セガ ありがとうございます。

国ごとの消費者動向を理解せよ

──日本と台湾や東南アジアで、SNSの使われ方に違いはありますか。
セガ 日本も台湾もSNSの浸透率は非常に高いのですが、Twitter人気の高さは日本の特徴の一つです。
 台湾ではFacebook人気が高く、インフルエンサーマーケティングにもよく活用されますが、日本のFacebookは仕事に関する投稿をするユーザーが多く、名刺代わりのように使われていますよね。
 チャネルの利用習慣は国によって違うので、どのインフルエンサーを、どのチャネルで活用すべきか、戦略を立てる際に国ごとの分析は重要になります。
ケニス 台湾のインフルエンサーマーケティングは、すでにとても成熟しており、毎年、大手メディアと提携した「上位100位のインフルエンサーランキング」が発表されるほどです。
 ただ、チャネルによって視聴者が変わるのは台湾も東南アジアも同じです。
 台湾では、TikTokは20歳以下の利用者が圧倒的に多く、Instagramは女性が多い。Facebookは年代問わず幅広く使われているので、上の年齢層にアプローチしたいときに選ばれます。YouTubeの利用はかなり盛んで、視聴率はテレビより高い場合もあります。
 クライアントがどういう視聴者をターゲットにするのかによってその手法は大きく変わるので、チャネル選択はかなり重要だと思います。
佐々木 海外展開を考える日本のブランドの観点から言うと、SNSの使われ方の違いについてのインサイトがとても重要だと思います。
 ヨーロッパやアメリカでも、SNSの使われ方は日本とはまったく違うので、日本の感覚のまま海外でTwitterやInstagramでマーケティングをやってもパフォーマンスが出ない。
ケニス ほかの違いでは、台湾や東南アジアでは商品を紹介すると同時に、ECに導線を張って商品販売につなげることが多い。
 それに対し、日本の場合ではブランドの訴求がほとんどです。
佐々木 たしかに、日本ではコミュニケーションとコマースがあまり結びついていないですよね。
 先日、中国人の同僚からWeChatの使われ方を見せてもらい衝撃を受けました。WeChatで会話をしながら「この前これを買ったんだよ」「いいね、私も欲しい」「これはどう?」などと、どんどん買い物リストに商品が追加されていく。
 話しながら買いたい商品のリンクをクリックしてチェックしていき、会話が終わったあとに「このリストから半分くらいを買おうかな」と購入ボタンを押せば、ショッピングが完了する。
 日本には、ここまでコマースに直結したコミュニケーションプラットフォームは存在していません。
 まずは、「こういう購入プラットフォームがあるんだ」と知ることが、海外でのマーケティングを考える上ですごく大事だなと思います。
セガ とても賛同します。大前提として、その国の文化や商慣習を理解することも必要です。
佐々木 その点は欠かせません。以前、アメリカの人気エアロバイクメーカーが海外へ初進出したというのでロンドンの店舗を訪れたのですが、お客さんがいなくてガラガラだったんです。
 店内にはアメリカのヒットチャートが流れていて、店員さんがすごく明るいノリで接客してくれるんですが、イギリスの文化的コンテクストからすると不釣り合いな印象を抱きました。
 自分たちのプロダクト、サービスが、進出先の国でどんなコンテクストにマッチするのかを把握するのはすごく重要だと思います。

日本のD2Cブランドは世界で勝てるか

──そもそも、国内のD2Cのブランドが、海外で成功する可能性はどれくらいあるのでしょうか。
佐々木 日本のD2Cブランドはクオリティも高く、丁寧にストーリーを込めているところも多い。大きなポテンシャルがあると感じています。
 ただ、先ほどの例のように、海外のコンテクストを理解していないと失敗する可能性が高まるので、現地におけるパートナー選びは非常に重要でしょう。
 それは、iKalaのような技術力と実績のある企業かもしれないですし、物流や製造においても、いかに現地のコンテクストに合ったコミュニケーションができるかがクリティカルな課題だと思います。
セガ 日本のブランドはその品質の良さで、世界中で人気があります。我が家の中を見渡しても、日本のメーカー、日本のコンテンツキャラクターのものばかりですよ。
 当社とのパートナーシップはもちろん歓迎ですが、それだけでなく、台湾を最初の海外拠点にすることは戦略としてお勧めしたいですね。
 SNS分析をすると、日本のブランドに対し、多くの台湾のインフルエンサーが投稿していますし、消費者からのコメントも多い。
 こうした土壌があることは、日本のブランドに対してインセンティブになると思います。
佐々木 僕の知り合いにも、初めての海外進出に台湾を検討しているというブランドが複数あります。
 中国のマーケットは非常に大きくて魅力的だけど、いきなり中国に入るのはリスクが高い。そこでまずは、台湾のみなさんに使ってもらえるようになろう、と考えているんです。
セガ それは、うれしいですね。
佐々木 今の消費者とブランドの接点を考えると、SNSが最重要コンポーネントだと僕は思っています。
 その接点に対して、iKalaのように高い分析技術を持ち、海外の側からサポートしてくれる会社があることは、海外進出したい日本ブランドにとって非常に心強いでしょう。
セガ D2Cの時代には、やはり信頼性が一番大事です。
 メイド・イン・ジャパンは、ハイクオリティの代名詞。すでに信頼性が高いブランドなのですから、その信頼性をさらに強固にするインフルエンサーマーケティングは、D2C時代の大きなチャンス。
 私たちが消費者とインフルエンサーの間で構築してきた信頼関係をうまく活用できれば、日本のD2Cブランドの海外進出をサポートできると考えています。
佐々木 iKalaは、AIを駆使した技術ドリブンな企業でありながら、消費者とインフルエンサーの人間性、双方の信頼感を重視していらっしゃる。
 これまで、丁寧にブランドストーリーを作り上げてきたD2Cブランドこそ、みなさんとご一緒できるといいんじゃないかなと思いました。
セガ iKalaのAI分析技術が探り出した、“各ブランド特性に応じたもっとも信頼性の高いインフルエンサー”を提案、提供することで、消費者に正しいブランドストーリーを伝えていただきたいですね。
 たくさんのインフルエンサーの中で、どのインフルエンサーの信頼性が高いか、消費者はどのインフルエンサーの話を聞いて一番安心して買い物できるか。我々はそこで強力なパートナーになれると思っています。
「iKala Japan」オフィシャルTwitter更新中 
  https://twitter.com/iKalaJP_offical