2021/11/11
【直撃】ステークホルダー経営は「キレイごと」なのか
成長と分配の両立を目指す「ステークホルダー資本主義」が、世界的に注目を浴びている。
日本では岸田文雄首相が、富の分配を強化する「新しい資本主義」を打ち出した。
そんな中、分配を考える前に、日本では富というパイそのものが小さくなっていると警鐘を鳴らしてきた人物がいる。一橋大学名誉教授兼CFO教育研究センターの伊藤邦雄センター長だ。
伊藤氏らがまとめた「伊藤レポート」(2014年)では、「上場企業たるものROE8%を目指すべし」と提唱。
日本の経営思想に大きな影響を与えた。
ROEは、株主の資産に対するリターンの大きさを示す。資本というパイの拡大を考えるうえでも欠かせない指標だ。
伊藤レポート発表からはや7年。今もなおROE8%に意義があるのか。本人にぶつけた。
INDEX
- 世界を震撼させた「クビ」
- ステークホルダー経営は「幻想」
- 日本は「価値破壊」企業
- パイを増やす「ROESG」
- 人は資源ではない。資本なのだ
- 経営者たるもの「マゾ」たれ
世界を震撼させた「クビ」
──2019年に、米国著名経営者が集うビジネスラウンドテーブルは、「株主利益至上主義」からの脱却を宣言しました。
伊藤 ビジネスラウンドテーブルで発せられたメッセージに対し、日本では「我が意を得たり」、「『三方よし』を是とする日本的経営が認められた」と、思っている人がいると聞きます。
私は違和感を覚えました。
例えば、フィデリティ投信社長やマサチューセッツ工科大学の上級講師を歴任したロバート・ポーゼンさんは、「決して日本企業のようになりたいのではない」と明言しています。
あくまでも、米国の経営者があまりに株主偏重主義と短期主義になってしまったことを反省しているのです。
日本企業は、世界のスタンダードと比べたら、まだまだ株主に目を向けているとはいえません。
そもそも、日本の近江商人による「三方よし」も、ステークホルダーとしての株主が抜け落ちています。この時代には、株主というものは存在しなかったからです
──とはいえ、欧米企業も重視するのは、株主利益だけではなくなりつつあります。
2021年3月に、経済界を震撼させたといってもいい出来事が起きました。(フランスの食品メーカーの)ダノンのエマニュエル・ファベールCEOが辞任に追い込まれたのです。
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