東芝の不正会計が時効 刑事責任問えず、経営難にも影響
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日本の刑事司法制度では、検察官が起訴しないと裁判にかかりません。「刑事責任問えず」は検察官が刑事事件として立件する意思がなかったことに尽きます。
比較される事件に、元日産のゴーン被告とケリー被告の「金融商品取引法違反」事件があります。この件では、検察官はケリー被告がゴーン被告らと共謀して元会長の報酬を有価証券報告書で実際より数十億円少なく報告するなどし「金融商品取引法違反」に違反したと主張していました。両氏は長く拘置された後、ゴーン被告は逃亡、ケリー被告の裁判は行われていますが、ケリー被告は報酬水準が同業他社と比較して低かったゴーン被告を引き止めるために合法な手段を検討していたためと主張しています。この意思決定は取締役会で決定される必要があるため、日産の他の取締役の関与が不可欠ですがそちらは立件されていません(司法取引が噂されていますが関連する一切の説明はありません)。
先日、SMBC日興証券では、株価下落の抑止行為を目的とする株式売り買いの偽装(売買の繰り返し)が行われたとして問題になり、金融商品取引法違反容疑で捜査中だと報道されています。事実であれば日本の証券市場の信頼性を揺るがす大事件だと思えます。
東芝の件に戻ると、東芝のパソコン事業では製造委託先に、東芝が購入した(buy)部品を有償で販売する(sell)仕組みを使い、利益をコントロールする手法を実施、期末に利益を水増しし、期初に戻していました。この手法は決算のタイミングをずらすことを可能にし業績の偽装に貢献します。
特に東芝の不起訴と日産の一部の取締役に対する起訴の違いは不公平感が大きいものと思われますが、この違いがどこから来るのか明らかにされるように求めたいと考えても、それに応える必要すらないのが現在の法制度ですので致し方ありません。
東芝は、経済産業省関係者と結託して海外の機関投資家に対し議決権行使をしないように圧力を加えた件で注目されていますし、日産の事件も別の意味で注目を集めていますので、海外のメディアには今回の時効による東芝の不起訴は日産の事件と比較された上で、「日本の司法制度の疑問」として取り上げられると思います。とんでもない悪しき前例を残してしまったと残念でなりません。経営陣は、忖度させて部下に実行させれば、刑事責任までは問えないと明らかにしてしまったようなものですから、今後同様の手法がまかり通ってしまってもどうしようもできないかと思います。
経営者がその気になれば内部統制を無効化できてしまうのに、忖度して勝手にやったていで同様の無効化がまかり通りかねない状況になってしまったのであれば、J-SOXにコストかけて取り組む必要などないと思います。
今回の結果にも心底ガッカリしています。