秋期漬物特集:中間流通トップに聞く=東京中央漬物・皆川昭弘社長
2014/09/26, 日本食糧新聞
ここ数年は大きなヒットに恵まれないが、各カテゴリーとも比較的安定している。このところ「割高でもおいしいもの」の売れ行きが順調だ。設備投資や手間もかかるが、漬物を炒め物、煮物など惣菜に加工した単価の高いものに挑戦できなければ生き残りは難しくなってきた。今夏は天候不順でキュウリ、ナス、野沢菜などの原料が不足し、浅漬けメーカーは欠品によって商機を逃した。浅漬けはリスクを背負っても売価を相場に応じて上げてもらえれば売上げに貢献できるが、量販店には理解してもらえない。ただ安いだけでは消費者は離れてしまい、売れなくなれば売場から外され、漬物売場が縮小するという悪循環になる。皆川昭弘社長に秋冬商戦の見通しと長期的展望を聞いた。
●挑戦できるメーカーに 割高でもおいしいもの
今年の春先から紀州産の梅干しは積極的な販促をかけている。13年産の相場が安く、量もあることから量目を増やして価格は下げ、消費者が買いやすくなっている。ただ、高品質なA級品が売れない一方、買い得感のあるB、C級品が来春までになくなるメーカーも出てくるようだ。
浅漬けは12年の食中毒事故以降、売りが戻り秋以降は徳用などの白菜が売れる。今夏は原料不足で欠品したところもある。浅漬けの売価設定は相場で変えなければ手当てが付かない。欠品させないためには、3、4割売価を上げて売りを止めることだ。漬物メーカーが売上げを落としても、買う消費者はゼロではないので量販店の売上げには貢献できるが、そこを量販店に理解してもらえない。
天候不順で野沢菜原料もひっ迫、出荷制限したメーカーもある。10月からは豊富に出てくる。塩蔵で長期保存できない原料を使用するメーカーは厳しい。
キムチは各社が盛んに新製品を出し、秋口から需要が戻る。甘口が好まれたが飽きられてきて、韓国風の乳酸発酵した高級品が売れてくる。
ショウガは市販の刻み、高価格帯の外食向けも安定している。懐石料理のコースで提供する鰹だし味のショウガを、100g入りを400円で販売し、毎日100個が売れている。店の土産用として6、7年前に店が開発したレシピで、おいしければ買ってもらえるということだ。1食当たり5000円から6000円の外食店では40、50円のガリなどを使うが、牛丼、回転寿司チェーンなどは価格優先になっている。
ラッキョウは品質の良いものは年明け以降動きが良くなった。NHKの「ためしてガッテン」で7月2日に取り上げられ、さらに動いた。国産の売れ行きは特に良い。ただ、その後の中国の想定外の報道で落ちる可能性もある。マスコミの影響は大きすぎる。
たくあんが生大根より安いのはおかしい。買う価値のある高くておいしいもの、売れるものを作らないと売場に並べてもらえない。工場の味付けではなく一流の料理人が監修するプロのもの、家庭で作るよりおいしいものでないと買ってもらえない。7、8年前から特定の量販店で、100g入り200円のカップ入りスライスたくあんが売れる。198円で400gほどある一本ものより売上げが取れる。CVSスイーツのように、便利でおいしくて食べきる量でいい。この方向に向かうだろう。
福神漬は市販、業務用とも安定的に売れている。粕漬、味漬は伸びはないがなくてはならない商材だ。
浅漬けメーカーがカット野菜に参入する一方、漬物を使った炒め物なども漬物メーカーが設備投資と手間をかけてやるべき。単価の高いものに挑戦できるメーカーが生き残る。
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