進撃の中国IT

カギを握るオープン戦略

打倒シャオミ。中国廉価スマホ「魅族」が狙う下克上

2014/9/26
世界の視線を集め始めた中国スマホ業界。その台風の目となっているシャオミ(小米)に続くのが、2003年創業の電気機器メーカー、魅族(Meizu)だ。同社が9月初めに発表した新製品「MX4」が、中国の若い消費者を沸かせている。激戦区の廉価スマホ市場を生き抜くため、魅族は新製品とともに「業界」を仲間につける戦略目標を発表した。

新型スマートフォン「魅族MX4」の発表会で、ついに過去に決別した新しい魅族が目の前に姿を表した。より人々に、より業界に近づいた魅族だ。 安くてオープン。それが新しいMX4の評価だ。

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写真:ifanr.com

思い切ってポジションを転換した、新しい魅族

魅族(Meizu)MX4の発表会でもっとも印象的だったのはどこか?

それは、1799元(約3万1500円)という価格だ。フラッグシップモデルのスマートフォンの価格が2000元を割り込むのは、魅族史上初めてのこととなる。

これは魅族が製品ポジションを引き下げたことを意味する。初代魅族MXの価格は2999元(約5万2500円)だった。そこにはアップルやサムスンとミドルレンジ〜ハイエンド市場を争う意図が込められていた。 1799元のMX4は人気スマートフォン、「シャオミ(小米)4」と同じローエンド〜ミドルレンジ市場を争う存在を選んだ。

昨年から今年にかけ、魅族の経営陣は「ニッチ」なレッテルから解き放たれたいとの願望を繰り返し口にしてきた。あるいは中国のハイエンド・スマートフォン市場はアップルとサムスンががっちりと掌握していることをよく理解するに至ったのだろう。

2014年2月にCEOに復帰した、創業者の黄章は前製品の魅族MX3の価格を引き下げ続けた。これは同社を支持してきたユーザーの気持ちを傷つけたが、MX3はユーザーを大きく増やした。少なくとも広州市の地下鉄でMX3を見かけるようになっている。

現在の魅族はこれまでとは違う。自らのポジショニングを再定義しようとしている。これまでのようにサムスンやアップルと戦うよりも、ローエンド〜ミドルレンジ市場で「中華酷聯」(中国ブランドのZTE、ファーウェイ、クールパッド、レノボを指す)と戦うほうが中国人ユーザーに受け入れられやすいのではないか。少なくとも技術や完成度の面において、魅族には一定のブランド価値があることは確かだ。

製品紹介は高尚さよりも親しみやすさで

会社と製品のポジショニングの変更は宣伝手段にも変化をもたらした。

今年の発表会では「わびさび」といった高級感漂う国際的なキャッチコピーは出現しなかった。発表会の冒頭から終わりまで、飛び出したのは「すんげぇ」「やつらもびっくり」といった流行語ばかり。製品の紹介もできる限りストレートな言葉が選ばれ、明確に、鋭く伝わるように工夫されていた。

プレゼンターを務めた白永祥・総裁の中国語、楊顔・副総裁の英語はともにひどい発音だったが、製品の特長はしっかりと伝わった。そこでも高尚で意味不明の文言はまったく使われなかった。

魅族のSNS営業販売担当である李楠・副総裁は、「対象ユーザーがいるところに魅族の販売担当は向かう」と、中国のマイクロブログである「ウェイボ」でつぶやいた。今後、SNSを使ったさまざまなタイプの営業宣伝にチャレンジしていくのだろう。

ただし製品を見ると、発表会ではMX4のハード条件の弱みから目をそらすよう努めていた部分もある。SoC(プロセッサを中核としたチップセット)にはメディアテック(MTK)社のMT6595が採用されているが、メモリは2GBしかない。そこが今後、消費者やネットユーザーから批判を受けるポイントになるかもしれない。

重点はスマホ製品よりも生存環境のオープンさ

スマートフォンという製品ジャンルは次第に成熟しつつある。ハードウェアにせよソフトウェアにせよ、新たな突破は難しい。

MX4は従来の製品と比べ、ボディ全般に金属パーツを採用している。これは今年の中国製携帯電話のトレンドどおりだ。 そして、カメラの画素数、ディスプレイ面積、ベゼル幅、ディスプレイ面積がフロントパネル面積に占める割合などのスペックも、中国では過度の競争によりすでにその価値を失っている。

さらに新しい自社OSのFlyme4は、iOS8にこれまで以上にそっくりなこと、そしてサードパーティーのアプリに魅族独自のアイコンが採用されていることを除けば、より多くのネットサービスに対応した程度で大きな変化はない。「大型ディスプレイ・インタラクティブ」は旧バージョンFlyme3の時点でFlymeの特長になっていた。だから今回の発表会でわざわざ再び言及する必要はなかった。

人々を不思議な思いにさせたのは、李楠氏がFlyme4の設計は「脱アプリ化」が目的だと表明したことだ。これによってサードパーティーのアプリ開発者が魅族と対立することにならないだろうか? サードパーティーがFlymeシステムに協力しないことになっても、ユーザーにFlymeを選択させるのが新OSの新たな目標だとでもいうのだろうか? まあ「脱アプリ化」といいつつも、Flymeのアプリストアにはこれまで以上に多くのアプリとゲームがそろっていることには変わらないのだが。

ただ、その一方で魅族はこれまでとは違う要素ももたらした。それは他社向けにスマートデバイス向けSDK(ソフトウェア開発キット)を開放し、システムレベルでのサポートを提供するという戦略だ。これによってMX4の持つ意味は大きく拡張され、スマートフォンにとどまるものではなくなった。 スマートデバイスとスマートフォンをセットにして低廉なセット価格で発売できるなら、大きな突破力を秘めたプランと言えるだろう。

[*訳注:同発表会で魅族が発表した「Connect To Meizu(魅族)」構想を発表。スマートウォッチなどのスマートデバイスを開発する他企業にSDKとサポートを提供し、協業していくことを明らかにした。]

現在のスマートデバイス・メーカーはどこも、企業規模は小さいながら独立は保ち続けたいという苦しい状況に置かれている。魅族のオープン戦略とサポートはスマートデバイスの創業者にとっては貴重な支援となるはずだ。

ただ、李楠副総裁が「世界よ、はっきり言おう、私は(お前の言うことなど)信じない!」と叫んだ時、期待していた拍手は起きなかった。観衆の反応が鈍かったのはスマートデバイス業界がまだなお一定の発展を蓄積していかなければならないからだ。

とはいえ、これまで孤軍奮闘してきた魅族はスマートデバイス業界というパートナーを手に入れたことで、ついに孤高の立場から抜け出し競争ラインに立ったのである。

[*訳注:「私は信じない!」とはライバル企業・シャオミ(小米)を批判したもの。もともとソフトウェア開発会社だったシャオミは他社向けにオープンな環境を提供すると表明していたが、スマートデバイス企業を買収してスマホを販売し始めたことから自社だけで完結する閉鎖的な環境を構築しようとしているのではないかと噂されているからだ。]

(執筆:陳一斌 翻訳:高口康太)

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