2021/11/5

【問題】GDPが増えても、なぜ私たちは幸せになれないのか?

NewsPicksエディター/音声事業 プロデューサー
人を中心に経済を考えれば、経済を直感的に捉えることができる──。
お金のむこうに人がいる』に掲げられたこのメッセージは、生き馬の目を抜く投機の世界で生きてきた著者の田内学氏が、長年の思索の末にたどり着いた結論だ。
日本に経済的な格差が存在することは疑いようもない。しかし、たとえば1000倍の資産を持つ者が、1000倍豊かな生活をしているかというと、疑問符がつく。
なぜなら、価格が1000倍のワインを飲んだからといって、1000倍おいしいわけでもなければ、1000倍の製造原価がかかっているわけでもない。つまり、1000倍の価値は、おそらくそのボトルの中にはないのだ。
ここには、お金の価値が「人」の労働から乖離し、「1000倍の価格=1000倍の価値」と皆が誤解することでかろうじて成立する、現在の経済の姿がある。
経済格差の是正というシリアスな課題でさえ、そんな歪んだ経済観の上で議論されていることを、田内氏は危惧する。
田内氏へのインタビューでは、彼がどのような社会と経済のあり方を見据えているのか、その一端を垣間見ることができた。
INDEX
  • 借り物でない言葉で経済を考えた
  • お金で根本的に解決できない問題
  • だから、子どもを育てることが重要

借り物でない言葉で経済を考えた

──今回、なぜ経済の入門書を書こうと思ったのですか?
田内 理由は2つあります。