2021/11/4

【新】数字を見るだけでは、「経済」は理解できない

NewsPicksエディター/音声事業 プロデューサー
国政選挙のたびに、大きな論点となるイシューの1つが「経済」だ。
しかし、そもそも「経済」とは何なのだろうか。経済成長は、国民一人一人の幸福度を向上させるのだろうか。
さらに突き詰めれば、「お金」とは何なのか。お金が「回る」とはどのような状態で、それは私たちの生活をどのように変えてくれるのだろうか。
わかっているようでいて、実はよくわかっていない経済とお金、そして私たちとの関係を、明快に解きほぐしてくれるのが、今年9月に出版された『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)だ。
著者の田内学氏は、16年にわたってゴールドマン・サックス証券で金利トレードに従事し、2019年に退社してからは中高生に金融教育を行っている。
経済用語や統計の読み方を知らなくても、エッセイを読むように本書を読み進めることができるのは、十代に向けて金融の仕組みを説いてきた経験が活かされているからだろう。
しかし、本書の解説がストンと腑に落ちる最大の理由は、その視線が一貫して「お金のむこう」にある「人」の労働にフォーカスされていることにある。
具体的には、どういうことか。価値観をひっくり返す起爆剤となるかもしれない「経済新入門」の中身を、田内氏のコメントを交えつつ、少しだけ紹介してみよう。
INDEX
  • 情報工学から金融の世界へ
  • お金を払うことがそんなに偉いのか
  • 「貿易黒字」の本当の意味
  • 大切なのは「効用を上げること」

情報工学から金融の世界へ

本書は3部構成。第1部では貨幣や付加価値といった経済行為の根本を学び、第2部で社会全体に貨幣が流通する仕組みを理解する。すると、第3部を読む頃には貿易黒字や財政赤字、年金問題といった国家規模の問題までが見通せるようになる。
経済理論や用語解説が続く、通常の経済書にはない大胆な構成は、田内氏のユニークなキャリアも背景にある。
「私は大学では情報工学を専攻して、プログラミングにどっぷりはまり、国際的なプログラミング大会で入賞した経験があります。ただ、経済学を専門的に学んだ人間ではありません。