[シドニー 2日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(豪中銀)は2日、債券利回りを低水準で維持する目標を廃止した。早期利上げに向け道を開くことで新型コロナウイルス禍で講じた景気刺激策の解除に向け大きな一歩を踏み出した。

ただロウ総裁は政策については忍耐強く取り組む考えを示し、来年5月にも利上げがあり得るとの市場の観測を改めて否定した。

理事会はこの日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを過去最低の0.10%に据え置いた。一方、2024年4月償還債の利回り10bpを目標とする措置を打ち切ることを決めた。

中銀は利回り目標の廃止決定について、景気回復に加え、第3・四半期の予想外のインフレ高進を示す最近のデータを反映していると説明した。

先週発表された第3・四半期の豪消費者物価指数(CPI)は、コアインフレ率が2015年以来の大幅な伸びを記録した。

さらに、2024年まで政策金利を据え置くという見通しも撤回した。インフレ率が予測よりも2年早く2─3%の目標レンジ内に戻ったことから23年の利上げが可能になったと指摘した。

一方、週40億豪ドル(30億米ドル)ペースで国債を購入し、少なくとも22年2月中旬まではこのペースで購入を継続する方針は維持した。

中銀は声明で「中心的な予想では、基調インフレ率は2023年末時点で2.5%程度であり、賃金もごく緩やかに伸びるとみられる中、理事会は忍耐強く対応する用意がある」とした。

<市場はなお来年の利上げを予想>

ロウ氏は「2022年のキャッシュレート引き上げを直近のデータや予想は正当化していない」と述べ、市場の見方に疑問を投げ掛けた。

一方、市場は中銀が後手に回っているとみている。金利先物は政策金利が2022年5月までに0.25%、年末までに1%に上昇することをほぼ完全に織り込んでいる。

エネルギー価格の高騰や供給のボトルネックにより、主要国中銀は引き締めの前倒しを検討し始めている。

市場は一連の利上げを織り込み済みだが、家計の負債が過去に比べてはるかに多いこともあり、今回の引き締めサイクルでは金利が1.75%を大きく上回ることはないとみている。

また前年比の賃金上昇率は1.7%と、インフレ率を2─3%の範囲で持続的に維持するために必要とされる3%強を大きく下回っている。

ジャナス・ヘンダーソンの投資ストラテジストは、市場が示唆する金融引き締めは2023年にかけて大幅な減速を引き起こすリスクがあると指摘。「こうした不確実性に直面しているため、中銀は23年半ば以降にゆっくり着実に引き締めサイクルを開始するだろう」との見方を示した。