イノベーションで成長せず?「革新、効果なし」が一石
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注目のコメント
◆"garbage in garbage out"な調査・研究・記事の連鎖
この日経の記事は明らかにミスリードさせる内容。最新の研究と書いているが引用元がない。写真の内容が引用元だとすると下記です。
イノベーションの画期性と企業成長:全国イノベーション調査を用いた分析(21年6月21日公開)
https://www.nistep.go.jp/archives/47668
この論文は国の統計を再分析したもので、基になる統計データは下記
http://hdl.handle.net/11035/00006707
論文は売上高の成長率に対して優位な因子は何かを分析しており、結果として有意が示されたのは「斬新的イノベーション」の要素であり「革新的イノベーション」は有意ではなかったというものです。分析結果は間違っていないとして、問題は研究論文と元の調査結果の言葉の定義・設定にあります。
論文でいう「革新的イノベーション」は元の調査時は「市場新規プロダクトイノベーション」と書かれており「新しい又は改善された製品又はサービスであって,当該企業の以前の製品又はサービスとはかなり異なり,かつ市場に導入されているもの」と定義されています。つまりは新製品が会社の売上高に与える影響は日本市場全体では有意ではなかったというの結果です。一方「斬新的イノベーション」は前者以外の改善活動はすべて含まれ、こちらは成長に有意であった(やっている企業は成長し、やっていない企業は成長していない)というものです。
ここまで書くと明らかですが、調査も研究論文もイノベーションの定義が我々が普段使っているものと大きく違っており、結果自体は至極当然のものです。停滞する日本市場では新製品や新市場進出は上手くいかず、地道な改善活動が効果的だというのは日本市場の現実を示しています。そして論文自体にも皮肉なことに「先行論文とは全く違った結果になった」と書かれている。言葉の定義を間違っているから違った結果になるし、日本市場と米国市場(先行論文は米国論文)の違いの考察ができずに終わっているのは非常に残念。
いろんな意味で"garbage in garbage out"な調査・研究・記事の連鎖でした。これが我々日本の実力かもしれません。もうね、イノベーションの言葉の定義をチャンと整理しませんか?
いくらなんでも酷すぎるし、世間をミスリードしちゃいそうな記事だと感じます。天下の日経さんらしくない記事のまとめ方だと感じます。