ソフトバンクG「ビジョン・ファンド」、日本企業初投資
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正直意外な第一号案件でした。事業モデル確立中のスタートアップというよりは、化合物への投資という従来の製薬会社とそこまで大差ない案件になります。欧米で許認可がおりているのであれば、グローバルファーマあるいは内資が開発を進めていてもおかしくないのですが、経緯がありバイオベンチャーの手元にいったのでしょう。
一番重要なのはどのような薬であるか。まずこれから臨床とあり、日本では新薬をしっかりと処方するには医師側も説明責任上学ぶことが多いため、投資リターンまでの時間軸は通常案件より長いと思います。動物実験からではないので通常の平均10年程度には該当しないものの、生物学製剤と考えると市場に受け入れられるかも重要なポイントで、誰も日本で認可を取りに行っていなかった理由かもしれません。
どちらにせよ、例えば片頭痛周りでエムガルティなど使用者にとって症状が完全に改善される画期的な新薬も出ているので期待はしたいと思います。ビジョン・ファンドの日本第一号投資先であるアキュリスファーマは、スイス製薬大手ノバルティスファーマ(の日本法人)からスピンアウトした研究開発ベンチャーですが、純粋な基礎研究よりも商業的性格が強いスタートアップ企業です。同社は、神経・精神疾患領域において、海外にて承認済みの医薬品の導入などを通じて、医薬品の開発・販売を行うことを事業主体にしています。他製薬企業ではシンバイオ製薬やそーせいのようなコア・コンピタンス(中核能力)をもつと思われます。
アキュリスファーマは、武田薬品工業湘南研究所を大幅に縮小して開設されたベンチャー・インキュベーション「湘南ヘルスイノベーションパーク(iPark)」内に位置しています。ここにテナントとして入居するベンジャー企業やビジネスサポート企業は国内外からの約50社に上り、日本トップクラスのヘルスサイエンス系サイエンスパークになっています。
サイエンスパークの目的として、入居する企業の研究者同士の研究情報の交換(任意)や人材交流(転職促進)を見込み、米シリコンバレー、英ケンブリッジなどでの成功モデルを参考にしています。
近年、新薬開発の難易度が上がっており、従来製薬企業が得意としていた「物量作戦」(大量に新薬候補を作り総当たりのような方式で試す方法を意図します)が効果的でなくなってきました。ゲノム(遺伝子)創薬と言われる領域は、新しい発想による研究をベースにしており製薬企業は苦手です。製薬企業は自前の研究所(中央研究所)を縮小し、ベンチャー企業に投資する方法によりリスクを下げようとしています。このことにより、製薬企業の有効なケイパビリティ(企業成長の原動力となる組織的能力)が変わりつあります。
iPark内には武田薬品工業の神経・精神疾患領域のグローバル研究拠点がありますが、同社は国内の研究機能を縮小していることから、アキュリスファーマとの提携等の新たな動きを連想される流れになっています。良い会社が日本にも出てきたからでも、SBGがアロケーション戦略を変更したからでもなんでもなく、日本も遅ればせながらレイトステージの案件が増えて同社のチケットサイズ間尺にあうようになってきたから。