途上国は廃プラのごみ箱じゃない! 〝怪獣〟も登場 EUがプラごみ輸出禁止へ
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廃プラスチックは日本からのコンテナ輸出もかなり多い品目です.古紙も同様ですが,リサイクル品はコンテナ輸出の主要品目です.
2017年には143.1万トンがコンテナで輸出されていました(貿易統計より).コンテナに換算すると大体40フィートコンテナ10万個くらいにはなるでしょうか.中国の環境規制で激減しており,2020年には82.1万トンと2017年から42.7%の減少です.一方で中国向けの減少分(寄与度)は51.9%分ですので,別の地域への出荷が増えています.
いきなり廃プラを輸出しないということは難しいとは思いますし,全部なくすかどうかについては私はそこまで厳格な立場ではありません.リサイクルの需要もあるため,全部が悪いとは言い切れないためです.そのうえでどこまで環境に配慮できるか,ということなのだと考えています.
ちなみに,中国の環境規制でこれら品目の輸出価格が上昇しており,リサイクル品の品質が良くなっている傾向もみられています.私も共同研究に入った以下の論文,分析も難しいものではありませんので是非ご覧ください.
Tran, Trang, Hiromasa Goto, and Takuma Matsuda. 2021. "The Impact of China’s Tightening Environmental Regulations on International Waste Trade and Logistics" Sustainability 13, no. 2: 987. https://doi.org/10.3390/su13020987日本ではエネルギーリカバリーがリサイクルの一手法とされており、材料としてのリサイクルは20%強にすぎないことがよく槍玉に挙げられますが、EUでも多くの国で材料リサイクル率は20%~30%の間で推移しており、エネルギー回収が盛んでないところは埋め立てで補っていることから、日本よりもはるかに高い埋立率の国が多く存在します(これらのリサイクル率も、定義にばらつきがあるとされていますが)。埋立もプラスチックの資源価値を浪費することに繋がりますし、燃やさなくても、プラスチックが分解される際の温室効果ガスの発生が指摘されています。一概にEUが優れているとは評価できないと考えられますし、国によります。
2021年1月のバーゼル条約付随書改正でプラスチック廃棄物の越境移動の管理が強化されましたが、今回のEU廃棄物輸送規則改正はさらに厳しく、EU域外への廃棄物輸出を原則として禁止するというもの。さらに、これまではEUの中でもEU他国のごみの処分を受け持ってきた国があったわけですが、新しい規則ではEU域内のプラごみのやり取りも制限される見込みです。
EUでは、輸出の規制と並行で使い捨てプラスチックの禁止やプラスチックリサイクルへの投資およびリサイクル材の用途拡大が進められています。確かに、使い捨てプラスチックに関しては日本よりも厳しい対応がされつつあります。一方で、急にプラごみが急になくなったり、受け入れ態勢が万全となるわけではありませんので、輸出が禁止となることによって一時的に埋立、焼却、投棄が増えるようなEU加盟国も出てくるかもしれません。これが一過性の「好転反応」となり、自国のプラごみは自国で処理するを原則としつつリサイクルの有効性が極限まで高まる、世界のモデルケースとなるとよいのですが。日本における廃プラスチック回収後の状況としては、
①6割程度がサーマルリサイクル
②2割程度がマテリアルリサイクル
③1割未満がケミカルリサイクル
④残りは焼却または埋立処分
PETボトルに関しては回収フローが構築され、
ボトルtoボトルで再生されやすい。
しかし塩ビや複合素材系は発生工程が少量の場合や分別困難なケースが多く、
良くてサーマル利用で一般的には安定型最終処分場行きが多くを占めます。
そもそも廃プラスチックとしてではなく、
混合廃棄物中のプラスチックは大半がサーマル用途となります。
選別ラインで分けても付着物や汚損があればマテリアル利用は困難です。
日本でもEU同様の廃棄物処理に対する機運が上がることを切に願います。