日本人の給料がどうにも上がらない決定的な理由
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①製造業ベースの考え方、②人材流動性の低さ、③日本人給与の下方硬直性、すべて同意で異論ありません。 (^^;
その上で、『ジョブ型では、社員の1人ひとりの能力を明らかにするだけではなく、「あなたは、この仕事をこなす能力がありませんから、別の仕事についてもらいます。その仕事の給与はいくらです」と伝えなければならない』と考えざるを得ない慣行そのものに、賃金が上がらない大きな要因が潜んでいるように感じます。
世界の時価総額ランキングトップ50社に日本企業が30社以上入っていた時代、世界の富は大量生産して不特定多数に大量販売する製造業が生み出していました。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといったものを先進国から持ち込んで、長い商品サイクルの中でカイゼンと擦り合わせを繰り返すことが成功の鍵でした。そうした時代には、真っ白な状態で採用した人材を会社が育てて社内ノウハウを共有させ、長期雇用で互いを理解させ、コミュニケーションの良い集団を作ることが競争力を高め利益を生みました。そうした時代には、新卒一括採用に始まる年功序列終身雇用で会社が仕事を与え続けるのが理に適った方策です。
ところが今は、目新しいモノやサービスが短いサイクルで登場する破壊型イノベーションの時代です。こうした時代には、事業戦略を明確に定め、それに必要な各種領域で尖ったスキルを持つ人材をピンポイントで揃えなければなりません。そうした時代には、スキルは会社に与えられるものでなく、各自が自分でキャリアを選んで自分が思うスキルを身に着けて、それを会社に提供して賃金を受け取るジョブ型雇用が理に適った方策です。就任する仕事をこなすスキルを持っているのは本人の責任ですから、仕事に見合うスキルが無ければ予め定めた一定のルールに基づいて辞めて貰うのが原則で、会社がその人に見合う別の仕事を捜すことはありません。
ところが日本企業と従業員の多くは製造業時代の慣行に縛られてあらたな価値が産み出せず、ROEは低く沈んだ状態です。ジョブ型雇用を標榜しても、企業を守って解雇させないことを原則とする日本の雇用保障の仕組みだと、会社は無理やり「別の仕事についてもらいます」と言わざるを得ず、会社も当人も自律的に新しいことを始めることが難しく、効率が上がりません。ここが変わらぬ限り、企業が成長し賃金が上がることは無さそうな・・・。まず最初に言わなくてはならないのは、平均値が日本の企業の給与を反映しているのかどうか、ということです。単に、給料の安い非正規社員の増加を反映しているだけかもしれません。中央値で見るか、大中企業の給料と非正規社員の給料に分けて見る必要があります。
人材移動の流動性の低下はここに書かれているとおりです。大学卒業時に就職先が決まってしまい、定年まで変わりないというのが日本の企業の平均システムです。大学院で研究することのほうが大卒より不利なので、大学院で研究する学生が減少傾向です。また、窓際のままでも、定年まで勤めたほうが、生涯給料が多いので、誰も積極的に転職しようとしません。特に、本来は給料の後払いなのに退職金が税制上、極端に優遇されていることが、人材の流動性を低下させています。
私は写真が趣味なのですが、最近つくづく思うのは、中国製品の性能向上です。昔は、日欧のパクリで、安くてもすぐ壊れるという評価でしたが、今は全く違っています。日欧には存在しないアイディア商品がいっぱいあり、しかも安いです。カメラ本体はもうしばはくは大丈夫でしょうが、もはや三脚などの周辺機器は日本に競争力は全くありません。安定はしてても、使いやすさの向上が全くない商品に手を出す人がどれくらいいるでしょうか? 実際のところ、カメラ関連の周辺機器は、日本の商品はほぼ完全に淘汰されてしまっています。
高くても性能が良ければ買う、という流れもあり、例えば、iPhone, iPadなどはその代表だと思っています。そういうものが作れないメーカーが衰退していくのは仕方ないことだと思っています。そういう意味では、資本主義の原理にまかせたほうがうまくいくのではないかとも思います。魅力のないものしか作れないメーカーを政府が援助しないことは重要でしょう。日本もアメリカ並みに、スクラップアンドビルドの世界になることが必要だと思っています。
要するに、安い給料しか払えないような企業はさっさと辞めて、給料の良い企業に転職することが必要だと思います。これで、日本人の平均給料は上がるはずです。この場合に問題になるのが、日本の人材の流動性を低下させているシステムです。退職金を給料の後払いであると判断して、所得税をかければ、それだけでかなり改善されると思います。極論になりますが、例外を除いて総労働時間の減少がひとつの理由だと思います。私が社会人になった1983年から10年間はまさにバブル時代。給料も上がり続けましたが労働時間(主に残業時間)も増え続けました。2倍働いて給料が1.5倍というイメージです。
その後の失われた10年(20年)で実質の労働時間は減少し、さらには働き方改革という名のもと休日(祝日増)も増えたと思います。それで生産性が上がっていれば良いのですがそうでもないようです。
X(生産性)× Y(時間)= 成果(報酬)
この式にあてはめれば、給与が上がらないのも当然のように思います。
労働時間を増やすというのがタブーであれば、結局のところ、生産性の高い業界・業種に労働力をシフトしていくしかないのでは・・・。(人財の流動化)
これから労働力の減少が進む日本で、「人手不足だが高い給料は出せない」という経営者には市場から退場していただくのが良いとも思います。