「全固体電池」実用化方針にサプライズ、トヨタの電池戦略はEV時代に競争優位を保つか
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北米に電池工場を建設するニュースが飛び込んで来ましたが、恐らく北米トヨタに押し切られた形でPPESでもPEVEでも無い3つ目の電池合弁会社を設立して、現在主流のNCMを内製せざるを得なかったのでしょう。2030年までに北米で一定のEVを生産するには。
ただトヨタはバッテリーの①材料・②構造・③製法の3つの観点から①ニッケル水素・②角形&液系・③塗工から、PPESによる②角形&全固体で③プレスに転換していく戦略を取ってました。
しかし①を現行のNCMにした②全固体にしても、電池の容量が増えたり寿命が伸びることは有りません。電池には①材料の系で必然的に決まる理論容量があるからです。
一方HEV向けで②バイポーラ型①ニッケル水素電池を発表したように、②バイポーラにすることで実装密度が上がるので電池容量が増えます。つまり全固体電池が②バイポーラもしくは積層に構造が変われば電池容量は増えます。しかし電解質を固体に変えることは一筋縄では行かず、2030年までにEVを出すには間に合わないと判断した結果、他社も使っている現行の液系三元系NCMを生産することにしたのだと思います。
また中国はCATLと提携していることも有り、トヨタ専用ラインに投資することで、液系NCMは一定量確保出来ます。
このようにトヨタの電池戦略は、ポートフォリオとロードマップを勘案した全方位戦略を採ってますが、唯一含まれていないのが中BYDが得意として上海テスラにも搭載されているリン酸鉄正極のLFPです。LFPは比較的安全で寿命も長いですが、寒冷地に向かず、重たいことも有るので乗用車には向かず、LFPに投資するくらいなら全固体実用化に注力するということなのかもしれません。
どちらにしてもバッテリーへの投資額や生産量ばかりに目を奪われますが、複数の選択肢と調達パートナーを確保しつつ、内製するトヨタにとっては現実的な投資をしつつ、現状のバッテリーを搭載したEVも一定数生産するという外からは伺いにくい取り組みをしています。もう少し評価されても良いと思うのですが、どうしても分かりにくいですね。自動車メーカー各社は今後5〜10年で数兆円の投資意向を示しています。特に目を見張るのはGMの4兆円投資(2025年までに)。EVでは電池の生産コストなどが課題に挙がりますが、トヨタもパナソニックと共同出資の子会社で増産を狙います。
トヨタは、現時点ではどの方式の電池が主流になってもついていけるよう全方位作戦を取ることが正しい選択だと思います。
この先の課題は、(ハイブリッドやエンジンの復権含め)市場がいずれかの方向に舵を切った際、一気にリソースを集中する判断力とスピード感ではないでしょうか。