2021/10/17

値上げだけじゃない。インフレが生む「サービス劣化」の現実

INDEX
  • 飲食店での「苦情」が増加
  • インフレの「過小評価」が起きる理由
  • 「インフレ=値上げ」ではない
  • 「災害」の枠で語れないコロナの影響
  • 「サービス品質」を測定する難しさ
  • 蓄積される「見えざる不満」

飲食店での「苦情」が増加

消費者物価のさまざまな測定値はここ数年、例を見ない速さで上昇し、インフレ率は2021年に急上昇している。しかし、極めて重要な点において、このデータですら、今起きていることを過小評価しているかもしれない。
供給の混乱や労働力不足に直面して、さまざまな業態の企業が、価格の引き上げではなく、顧客に提供するものやサービスを少し削ることで、こうした問題に対処してきた。
ホテルの料金は1年前と変わらないかもしれない。しかし客室清掃スタッフの不足から、毎日の清掃サービスは料金に含まれなくなるかもしれない。
一部のレストランではウェイターの人数が減り、提供するサービスが限定される。新車の購入を考えている人は、待たされたくなければ、色や性能、モデルにこだわらないほうがいい……というアドバイスを受ける。
6万軒のレストランのオンラインレビューを追跡するブラックボックス・インテリジェンスによると、今年はレストランの清潔さに対する客の評価が、全体で4.2%低下した。
とりわけ低下しているのが、飲み物に関するサービスの満足度。注文を間違えられた、いつまでたっても飲み物がこないといった客の苦情が増えている。また、テーブル、床、トイレの清潔さに関する苦情も頻繁に発生しているという。
(fizkes/iStock/Getty Images)
家電製品やその他の商品を購入するまでの待ち時間も長くなっている。
調査会社のJ.D.パワーによると、最も評価の高い店でも、今年は5分以内にサービスを受けることができた顧客は全体の57%で、2018年の68%から大きく下がった。