[ソウル 14日 ロイター] - 北朝鮮で11日、兵器を展示する「国防発展展覧会」が開幕した。韓国が最新兵器などを集めて19日から開く「ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会」(ADEX)の直前のタイミングでの開催で、北朝鮮がこうした展示会を催すこと自体、非常にまれだ。2つの兵器展示会は、すでにかなりの軍事力を持つ両国による軍備拡張の最新動向を示すものでもある。

<「私を忘れるな」>

北朝鮮がこの時期に展示会を開催するのは、軍拡競争が激化する中、兵器展示で韓国を出し抜くのも狙いではないかと専門家は指摘する。

韓国航空宇宙学会の元会長、チョ・ジンス氏は「北朝鮮はタイミングを狙いすまして展示会を開催したに違いない。韓国が自国の兵器システムを海外に売り込むために予定しているADEXの前に開催時期を設定し、国際社会の目を引き付けるのが狙いだ」と分析。「北朝鮮は兵器を売るために韓国の展示会に便乗し、『私を忘れるな』というメッセージを発信している」という。

ADEXは2009年以来、2年に1度開催されている。北朝鮮の兵器展示会の開催は、事前に発表されなかった。

北朝鮮の軍事能力に詳しいジュースト・オリエマンズ氏は「今回の展示会開催にはさまざまな事情があったと考えられる」とした上で、「重要なのは、両国が緊張と対立の再燃に備えているという背景だ」とみている。

<兵器披露と指導者の偶像化>

2つの兵器展示会は表面的には似通っており、開催時期も近接している。しかし内容はかなり異なる上、同じ顧客の獲得を競っているわけでもない。

国際戦略研究所のジョセフ・デンプシー氏は、通常は軍事パレードで武器を誇示する北朝鮮が各兵器のデータを記したカードを完備した展覧会の実施を決断したことは「非常に珍しい」ことだと指摘する。

同国は核開発問題で制裁を受けているほか、新型コロナウイルス感染を防ぐために国境を閉鎖している。国営メディアによると同国の展示会を訪れているのは国内の関係者だけで、国外の主要な代表は来ていない。

北朝鮮情勢を分析している「38ノース」プロジェクトのアナリスト、レイチェル・ミニョン・リー氏によると、展示会は金正恩総書記の絵などが飾られており、新兵器のお披露目とともに、指導者の偶像化も目的だ。

<緊張緩和外交の側面も>

一方の韓国のADEXは、主催者の発表によると28カ国から企業440社が参加し、45カ国から国防相など約300人の軍事・防衛関係者が訪れる予定。水素を燃料とするドローン、バーチャルリアリティー(仮想現実)を利用した訓練システム、レーザー兵器、多目的無人車両など、韓国の最新の防衛技術が紹介される。専門家によると、目玉は次世代戦闘機KF-21の試作機などだ。

世界各地で航空宇宙・防衛関連の展示会を手掛けるカルマン・ワールドワイドによると、ADEXの背景には、北朝鮮による「核の脅威」と、その緊張を外交によって和らげようとする取り組みがある。ゆえにADEXは「特別な緊急性と関心を帯びているという特殊性がある」という。

韓国は近年、国防予算を大幅に増額している。北朝鮮に対抗するとともに、米国の支援からも脱却し、さらには軍事輸出産業を拡大するのが狙いだ。国防省は2022年の国防予算として、前年比4.5%増の55兆2300億ウォン(476億ドル)を求めている。

(Josh Smith記者)