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ワクチンの接種開始までには長い時間がかかり、これによって初動が遅れ、デルタ株に対する被害が拡大したのは事実としてあります。
追い上げは素晴らしいものがあり、今となっては世界トップレベルにありますが、初動も改善できればなおよい効果が見込めます。
特に科学技術に対して「安全」と同時に「安心」を求める日本においては、この様な承認プロセスは安全性の確保と同時に、しっかりとした広報が必要です。
広報の広がりには時間がかかりますから、今から「省略する過程の内容」や「その意味」についてはしっかり広報する必要があるでしょう。
次いで承認申請が出された米モデルナ社製ワクチンでは、日本で検討された症例は米ファイザー社製よりもさらに少なく、臨床試験に参加する方が十分に集まらないまま(ファイザー製での確認症例数さえも満たさないまま)、迅速に条件付き承認をしています。
さらに次の中外製薬社製抗体カクテル薬に関しては、日本が世界に先立って極めて迅速に承認していますが、コロナ前の日本の基準では必須とされていた、大規模に患者が参加して行われる臨床第3相試験は行われず、臨床第2相の結果のみの少数例の有効性・安全性のデータをもって、世界で最も早く条件付き承認しています。
3つの事例を見る限り、自国の臨床試験データを審査して承認している国を除き、海外(実質、米の緊急使用許可)のデータがあることをもって最も迅速に医薬品を正式承認している先進国は、現時点では日本でしょう。
緊急時には安全性の確認を犠牲にしても使える医薬品が必要になること(副作用が出る可能性を容認しても迅速に医薬品を使えるようにする必要性)は理解しつつも、これ以上の簡略化した薬事承認に関しては安全性の担保が疎かになりすぎるという懸念は、政府も持っているはずです。
記事には「厚生労働省の承認のプロセスに法改正が必要」と書かれていますが、「実質的にはこれ以上簡略化されたデータでの承認はありえない」と思います。したがって、記事中の「法改正」とは、米ファイザー社製以降、超法規的に迅速な承認がされ続いている現状に、現行の法律を合わせることと理解しています。
日本でこのような状況が生まれている理由に、一般の方の臨床試験への理解が得られていないことがありますので、この点については抜本的な戦略策定が必要だと思います。できないのなら、日本独自の臨床試験の実施はあきらめ、外国に依存するしかありません。