中国、フィンテック業界の締め付け継続へ-人民銀総裁が言明
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中国人民銀行総裁が、BISの会合でフィンテックを巡る規制強化で3つの原則を提示。金融ビジネスにおける事業免許取得の義務化、ノンバンクと銀行サービスの直接的つながりの遮断、セクター横断型リスクを防ぐために保険や資産運用など異なる事業間でファイアウオールを構築することを挙げた。
興味深いですね。この規制が実現すると、PayPay等が目標にしていると思われるAlipayやPaytmが実現しているコマースを軸としたシームレスな金融サービスの提供等ができなくなるという事になります。
この流れが中国内に留まり、中国プラットフォーマーの縮退に終わるのか、これに端を発して、プラットフォーマーと金融の分離がグローバルでも議論が巻き怒るのかは、とても気になる点です。中央銀行と独占禁止当局が手を組んでインターネットプラットフォーム企業のビジネスにブレーキをかけるという動き。これはある種のリスキーな社会実験ということも出来ると思う。
かつて中国は、政府とアリババやテンセントなどの中国版プラットフォーマーが一体となってアクセルを踏み込み、米国や日本が真似できないほど絶大な影響力を持つスーパーアプリなどを作り上げ、この分野で米国や日本などが規制でがんじがらめになっているのを尻目に独走するかに見えた。
自らその優位性を棄てて、一気にブレーキを踏むような中国の一連の動きには、経済合理性では説明出来ない国内背景があるとしか考えられない。
冷静になって、純粋にビジネスの観点から考えると、日本や米国のプラットフォーマーにとってこれは中国のオウンゴールで、産業の国際競争力という見方からは、チャンス到来と考えるべきことなのかも知れない、などと実は思っています。易綱さんの発言は、国際決済銀行(BIS)のビッグテック規制に関するコンファレンスの基調講演で行われたものです。論点も正確には「フィンテック規制」と言うよりも、「ビッグテック規制」と言うべきでしょう。
BISも、中国人民銀行総裁に敢えて基調講演をさせている訳で、この問題に関しては、BISと中国の利害が合致していると思います。
BISやFSBはリーマンショック後、銀行(特に大銀行)への規制強化を進めた訳ですが、その後銀行が規制や低金利環境などの逆風で苦闘する中、むしろ注視すべきはノンバンク巨大企業(ビッグテック)の金融参入ではないかという議論が、近年ずっと高まっていました。
(この中で、私自身もBISやFSBでいろいろな報告書に関わりました。https://www.fsb.org/wp-content/uploads/P140219.pdf など)
この間中国は、まさにアリババやテンセントのようなビッグテックを育てた訳ですが、ここにきて、これらが国を凌駕し得るパワーとなることは歓迎しない姿勢を強めており、最近では独禁法規制や業務規制、上場ストップ等、さまざまな方策を採っています。(デジタル人民元も、アリペイやウイチャットへの牽制という意味合いもあります。)
また、もともと中国の規制はビッグテックに有利という声がありました。例えば中国のビッグテックはグループ内に決済(AlipayやWeChat)、バーチャル銀行(MyBankやWeBank)、投信(YueBao)などの機能を揃えていますが、これまでは個別の銀行エンティティの部分しか銀行規制がかかりませんでした(これが米国であれば、持株会社グループ全体がFHCとして金融規制の対象になる可能性が高い)。
その意味で、易綱さんの発言は、今の流れを意識し、国際的にも「受けやすいもの」を並べたなと感じます。