原油価格の上昇や欧米の長期金利の上昇が意味するもの
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もちろん、当局者側には「インフレ圧力は一時的」と言い続けなければいけない事情があります。長期にわたる大規模緩和に漬かってきた市場にとって、「インフレ圧力は持続的」といった当局の情報発信は大きなショックになり得ます。そうしたショックを与えることは、極力避けたい訳ですので。
ただ、上昇しているのが原油だけとか、小麦だけというのであれば一時的な供給ショックに寄せた説明もできるかもしれませんが、最近の一次産品価格の上昇はエネルギー、鉱物資源、農産物などコモディティ全般にわたるものですので、やはり共通のマクロ要因も背景にあると捉えるのが自然と思います。(最も考えやすいのは、やはり世界的な財政支出の拡大の影響でしょう。)
当局の説明も、「基本シナリオは一時的」と言いながら、「インフレ予想次第では持続的なものに転嫁するリスク云々」といったヘッジが、少しずつ増えているように感じます。日本国債について長期金利の持つ機能が失われたままという事態が続くことが予想されるのは、中立金利が大幅マイナスに突っ込んでいるからでしょう。
それは、国民の多くが現在のお金よりも将来のお金が大事と思ってお金貯めこんでるわけですから、お金の需給で決まる金利が上がらないのは当然だと思いますが。
日本経済にとっては政府債務をリスクと勘違いしていること自体がリスクだと思います。誤解が多いのは原油価格で、2008年の史上最高値140ドルと比較するとまだ70-80ドルと半値で、例外的に上がっていません。原油以外のほぼ全ての商品市況は史上最高値圏です。上昇の原因の第一は、金融緩和で投機資金が流入しています。第二は環境保護で、化石燃料は敵視されており投資は凍結です。穀物は異常気象の影響もあります。また、エネルギー価格と穀物価格はエタノールを通じて連動します。あまり知られていませんが、再生可能エネルギーのための太陽光発電など設備の製造には、その設備の発電量の約5倍の電力を必要とします。銅やアルミなど鉱物資源は、化石燃料の発電機と比較すると50-90倍の量を必要とします。脱炭素は多くの人の想像を遥かに超える資源と電力を必要とするのです。日本の電気代は2倍ぐらいにしか上がっていませんが、欧州は6-7倍に上がっています。