2021/10/3

【解説】変化に強い企業が、既存ビジネスを大切にする理由

NewsPicks ジャーナリスト
「強い企業が生き残るのではない、変化する企業が生き残るのだ」。このようなフレーズをよく耳にする。
環境の変化が激しい時代にあって、個人も企業も「今持っている力」よりも、「変化する力」が重視されている。
そんな中、NewsPicksでもおなじみの冨山和彦氏や入山章栄氏らが翻訳したビジネス書『両利きの経営』(東洋経済新報社)が注目されている。
両利きの経営はアマゾンやネットフリックスが実践しており、日本でもソニーグループ、トヨタ自動車、ブリヂストンなどが取り入れている。これからの経営の「帝王学」になるかもしれない。
ただ、これほどまでに重要と言われながらも、十分に理解されているとはいえない。
そこで、2020年から両利きの経営を実践しているブリヂストンのほか、ソニーやトヨタの事例も引き合いに、企業変革の新しい王道を解説する。
INDEX
  • 「二兎」を追え
  • 「変化」こそ、強み
  • 「カニバリ」のジレンマ
  • 石の上にも「四十年」
  • 「深化」は甘くない
  • カイゼンのすゝめ
  • 汝、ダブルスタンダードを愛せ

「二兎」を追え

2019年初頭に発売された『両利きの経営(原著:Lead and Disrupt)』は、経営学者チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマンが著した書籍だ。
経営学者の故クレイトン・クリステンセンが1990年代に提唱した「イノベーションのジレンマ」のアップデート版といった位置付けでもある。
副題は、「『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く」。「悪手」とされる二兎を追うのが要点だ。二兎とは、「深化」と「探索」のことだ。