[ソウル 29日 ロイター] - 北朝鮮は新たに開発した極超音速ミサイル「火星8」の発射実験を28日に初めて実施した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)が29日伝えた。

韓国軍は28日、北朝鮮が東側の海へ向けて1発のミサイルを発射したと発表。北朝鮮の金星(キム・ソン)国連大使がニューヨークの国連総会で演説するさなかの出来事だった。

金大使は演説で、誰も北朝鮮の自衛権や兵器実験を行う権利を否定できないと主張し、米国に敵視政策を放棄するよう呼び掛けた。

KCNAは、極超音速ミサイルを「戦略的兵器」と表現し、この兵器システムの開発は北朝鮮の防衛力を高めると指摘した。

米国との非核化に向けた協議が行き詰る中、北朝鮮は兵器システムの開発を着実に進めている。

KCNAによると、金正恩・朝鮮労働党総書記は実験に立ち会わなかった。今回の発射実験では火星8の飛行の制御性能と安定性を確めた。火星8は切り離された弾頭の誘導機動性と滑空飛行の特性などの技術的基準を満たしたという。

韓国軍合同参謀本部(JCS)は29日、北朝鮮の極超音速ミサイルは、検知速度などのデータで判断すると、開発の初期段階にあり、戦闘に使用可能になるまでには「かなりの時間」を要するとの見解を示した。

極超音速ミサイルは音速の5倍以上のスピードで飛行できるため、従来の防衛システムでは探知や迎撃が難しい。米国、ロシア、中国が開発を行っている。

米国防総省は27日、極超音速ミサイルの飛行実験に成功したと発表した。

韓国航空大学校のミサイル専門家、Chang Young-keun氏は、北朝鮮による極超音速滑空体(HGV)の試射は失敗だった可能性が高いと指摘。韓国軍情報当局が速度をマッハ2.5と分析したとの報道を理由に挙げた。

「北朝鮮のHGV技術は米、ロシア、中国の技術に匹敵するレベルにはなく、現段階では韓国や日本をターゲットにするような短距離を意図しているようだ」と述べた。

米カーネギー国際平和基金の上級研究員、アンキット・パンダ氏によると、火星シリーズのミサイルは、液体推進剤エンジンを使っている。

同氏はツイッターに「2017年11月以降、北朝鮮における液体推進剤ミサイルの最初の実験だ」と投稿した。

また、北朝鮮の国営メディアは、国会に当たる最高人民会議が28日に開かれたと報じた。経済政策や若年層の教育などを議論することが目的という。