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デジタルによる伝統工芸ビジネスのアップデート、非常に共感します。私も数年前に加賀友禅の作家さんからお手紙をいただき、実際に金沢の工房までお邪魔して、伝統工芸の世界をデジタルが如何にサポートし得るのかを、じっくり学ばせていただきました。

加賀友禅の技法は、下絵に白絹を載せて柄の輪郭を写し、染料同士が混ざらないよう輪郭に糸目糊を施して染色するものです。アドビのIllustratorというツールではスキャンした下絵をペンタブレットでトレースし、パスを閉じてからペイントしますが、その工程は加賀友禅の技法と酷似しており、工房の主の上坂さんは「伝統のアナログと現代のデジタルの絶妙な関係性に感動を覚えた」と話してくださいました。

加賀友禅の作品では、花や鳥などの図柄が繰り返し多用されますが、そのデザインパーツを元絵としてストックしておけば似た基本図柄を一つひとつ描き起こすことなく、必要に応じて加工するだけで作品作りがスピーディーになるのです。実際に生地に描く場合と違い、Illustratorを使うことで簡単に何度でも描き直せるため、実験的なデザインを躊躇なく試せるようになったのも大きな収穫とのことでした。また制作の過程で、発注主に途中段階のものを見せる際も、デジタルであるがゆえに簡単にデータをやり取りすることができ、クライアントからの要望を瞬時にデザインに反映させることも簡単です。

加えて画像を鮮明に引き伸ばせるベクター形式のデータを活用したことにより、従来は着物の上でのみ展開されていた和のデザインが、壁紙、各種内装、ディスプレイ、アパレルなど、サイズを問わず、あらゆる素材に美しい花鳥風月をあしらうことが可能になったのです。

「デザインパーツのストックによってトレースに要する時間も短縮されました。単純作業を効率化することで捻出した時間を、全体の構想や細部の配色などよりクリエイティブな側面に費やせるようになり、創作活動の質を高めることにつながっています」と伺い、伝統工芸の世界でデジタルがこんなにも役に立てるのだと感動したものです。

急速に継承者が減っている伝統工芸も、こうした形でデジタルがサポートすることにより、若い人にとっても身近で魅力的なものとなれば、新たな継承者が生まれることにもつながるのかもしれません。