再生エネ証書を値下げ 経産省
コメント
注目のコメント
現在電気料金に加算されている再エネ賦課金は3.36円/kWhですが、これを供給されている再エネ電源の量あたりに換算すると、約28円となるので、現在電力を使っている人は再エネ電力kWhあたり28円で買い取っていることになります。
これまでは「非化石価値取引市場」によって、電力小売事業者がFIT価値の一部を買い取って、電力メニュー上のFIT再エネ量を増やせる仕組みでした。価格は最低価格が1.3円、最高が4円に設定されていますが、運用が始まった2017年から平均価格はずっと1.3円で張り付いています。これでは市場取引システムを作った意味ないですよね。経産省が決めた値段で買い取ってるのと同じ。
1.3円で小売が一部の非化石価値を買い取ると、ごくごく僅かに賦課金(つまり国民負担)を下げる効果がありますが、取引量も少なく誤差の範囲です。
それを今回0.3円にという事なのでますます低減効果はなくなりますが、まあ消費者への影響はほぼゼロでしょう。
新しい制度では、小売事業者ではなく、再エネ電力を消費した事にしたい電力需要家が買い手となります。
ややこしい仕組みですね。
通常はFIT再エネ電力を消費したとみなされるのは、28円を払っている一般の需要家。しかし、普通の人は再エネ電力を消費していても資本市場に評価されないので、それを0.3円で事業者が買い取って再エネ消費100%企業を増やし、株価を上げたり投融資を受けやすくするという事です。
これは国民負担で作った再エネ電気を市場価格の1/100という値段で企業が買えるようにする「事実上」の産業補助金ですが、類似の仕組みは海外でもあって日本は「遅れている」ので、公平性に問題はあっても見かけ上の「ビジネス気候正義」として正しいのでしょう。
ただし、この仕組みで買い取っても再エネ開発は促進されない(「追加性」がない)ので、その問題は今後指摘されるでしょう。日本以外の国や類似の仕組みを活用する多くのRE100企業はどうするんでしょうか。この短い記事では「再エネが安く買えるようになり、普及する!」と思いますよね。そんなことにはならないのが問題なんです。
この再エネ証書が売るのは、FIT制度で導入された再エネが持つ「CO2を出さない価値(以下、環境価値)」です。私たち電力消費者が電気代に含めて再エネへの補助金(賦課金)を払っていますので、私たちがその再エネの環境価値を買ったことになります。
ただ、消費者が持っていても、その価値は何の役にも立ちません。でもほしい人がいます。「再エネ100%の電気使ってます!」と言いたい企業などです。国際的に再エネの電気を使うことが企業に推奨されているからです。でも日本ではまだ再エネが高いですし、企業の活動を物理的に再エネだけで支えるというのはほぼ無理ですので、ちょっとくらいならお金を出して再エネの「証書」を買いたい、ついては、再エネ証書を安くしてくれという声が高まりました。
価値の持ち主である我々消費者が値段を交渉するわけでもありませんので、証書は市場で取引されると言っても、経産省が決めた下限値に張り付く状態が続いていました。その下限値がいままで1.3円だったのですが、「それでも高い!」「海外はもっと安い!」という声に応えて下限値をさらに引き下げる、というものです。
この証書を売った利益は、私たちの再エネに対する補助金負担を減らすために使われていましたので、証書を安くで売るというのは大場さんご指摘の通り、買い手となる企業への補助金になるということです。
再エネ補助の国民負担を抑えるのが遠のくのも問題ですが、本質的な問題は新しい再エネを増やさないこと。こうした証書で安く「わが社は再エネ使ってます!」と言えるのであればわざわざ本物の再エネに投資しません。いま注目が集まりつつある自家消費(自社工場の屋根や駐車場に設置する)太陽光の導入意欲は低減するでしょう。
そんな問題点は、経産省も十分わかっています。(先日の公益事業学会のパネルでも指摘しました)ではなぜ値下げするのか?
再エネを謳いたい人たちの強い声に政治的に押されるからです。
こうやって、再エネ関係はパチもんの制度が多くなってグダグダになるんです。
過渡期ですからとこういう制度を認めるのもアリではありますが、グリーンウォッシュ(イメージだけのグリーン)として、早晩、国際的には認められなくなるのではと思います。