2021/9/29

【5分解説】教育・医療・製造業…DXの鍵はつながっている

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
 いまDXによってあまねく事業が変化を遂げつつある。
 既存の仕組みがデジタルに置き換わるだけでなく、顧客体験、ビジネスモデル、製造プロセスひいては業界の垣根そのものが溶け始めた。
 経済産業省の商務情報政策局長などを歴任した西山圭太氏は、著書の中でこう述べている。
 我々はデジタル化の全面化、つまり、デジタル化がインターネットのなかだけにとどまらず、リアルな世界と一体化する時代を生きている。

 工場が丸ごとデジタル化するとスマート工場、街が丸ごとデジタル化するとスマートシティ、ビジネスが丸ごとデジタル化するのがスマートビジネスである。それは、会社のあり方そのものがソフトウェア、アルゴリズムのようになりつつあるということを意味している。

(中略)

 デジタル化が全面化する時代に変容しつつあるのは、個々の企業の経営のあり方だけではない。企業が活動する産業そのもの、消費者を含めて取引を行う市場そのものが、新しいかたちにトランスフォームしつつある。

西山圭太著『DXの思考法』1章より
 そして西山氏は、産業まるごとの転換を「IX(インダストリアル・トランスフォーメーション)」と呼び、IX時代の「経営のロジック」と「デジタル化のロジック」を、個人と組織にインストールするのがDXの本質であると喝破する。
 本稿では、教育・医療・製造業について、西山圭太氏(東京大学 未来ビジョン研究センター 客員教授)、小宮山利恵子氏(スタディサプリ教育AI研究所所長)、宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教授)、島田太郎氏(東芝 CDO/執行役上席常務)の見解とともにIXの論点を解説していく。
INDEX
  • 教育産業が抱える3つの課題
  • 教育業界のDXの鍵とは
  • 教育産業のDXトレンド
  • Smart Education戦略
  • 医療ヘルスケア産業の3つの課題
  • 医療ヘルスケア産業のDXの鍵とは
  • 医療ヘルスケア業界のDXトレンド
  • Smart Healthcare戦略
  • 製造業が抱える3つの課題
  • 製造業のDXの鍵とは
  • 製造業のDXトレンド
  • Smart Factory戦略
  • DXからIXへ至る道
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教育産業が抱える3つの課題

 Covid-19によってオンライン学習が余儀なくされ、政府による「GIGAスクール構想」によって1人1台の学習端末環境が急速に整備されるなど、ようやくハード・インフラが整備されてきた。
 一方で、日本特有の画一型、一斉型の教育指導要領・プログラムを適切に修正してこなかった側面がある。そのためにSTEM教育 の義務化やデバイスを用いた授業など、他の先進国の教育現場で起きている変化に後れを取っている。
※STEM敎育:Science、Technology、 Engineering、Mathematicsの頭文字。米国発祥の教育カリキュラム。日本ではプログラミングなど2020年から義務教育化。Artの頭文字を加えてSTEAM教育、Roboticsの頭文字を加えてSTREAM教育と呼ばれることも。
 小学校と中学校/高等学校で事情は多様だが、学校教育の主な課題として以下3つがあげられる。
課題① 教育格差・学力格差
親の学歴・世帯収入・職業などの相対的貧困によって生じる「教育格差」。さらに、ICT導入においては地域の自治体間の格差によってさらなる教育格差、そして学力格差が生じている。
課題② 教員の恒常的な負荷
各教育現場において、自助努力を含む働き方改革に向けた各種取り組みが推進されているものの、教員の児童・生徒に対する想い、そして地域・社会から学校に寄せられる期待の大きさと相まって、依然、長時間労働の改善は道半ばである。
課題③ テクノロジーへの対応
ICT環境の整備という側面にとどまらず、教員のリテラシーの向上も必須となる。また、AI・ロボティクス等の技術を中心とした社会変化に伴い、文部科学省の新たな学習指導要領においては、初めて「情報活用能力」が学習の基盤となる資質・能力と位置付けられた。

教育業界のDXの鍵とは

 日本の教育は150年以上変化がなく、これまでに築かれてきたシステムの歯車が強固に噛み合っている状況です。そのような中、テクノロジーを一部分導入するだけでは上手く機能しません。
 DXは部分最適化ではなく、抜本的な構造改革であることを認識し実行してこそ初めて成功します。抜本的な改革である以上、学校や教員の役割など、あらゆることについて再定義が重要になってくるのです。
 また教育にもDXが入ってくることで、学習についても知の深化と探索を促すような“両利きの学び”を考える良い機会になります。
 知の深化として、一人一台PCは個別習熟度別の学習を促し、教科によっては習得までの時間を短縮でき効率的に学べるようになる。
 知の探索として、空いた時間で新しいことに試行錯誤しながら挑戦する。一見無駄なようでも視野が広がり長期的に役に立つような学びを行うことが可能になるはずです。
 DXというと生徒の学習に焦点がいきがちですが、教員の校務の改革も必須です。リクルートの提供する「スタディサプリ」を利用している教員からは、それに付随するメッセージやアンケート機能が教員の業務負担の軽減に役立ち、 時間ができたことでより生徒を観察する時間が増えたという声が多数あります。
 日本の教員は世界一多忙と言われますが、その環境をDXで打破できる可能性はあります。

教育産業のDXトレンド

 教育・学習のソリューションは、STEM教育への対応やMOOC の登場により以前から熱が高まっていた。そこにCovid-19によって、世界中の学校が休校になったため、自宅学習の需要が急増した。
※MOOC:Massive Open Online Course。欧米の一流大学の講義が受けられる。課題・試験があり修了証がもらえるサービスも。ビルゲイツやGoogleなどの寄付による無料のサービス「Khan Academy」など。
 スマホやタブレットを利用したオンライン学習に加え、学習者の理解度に合わせたアダプティブラーニング、自ら能動的に学びに向かうよう設計されたアクティブラーニングなど、テクノロジーを活用した学習システムである「EdTech」が次々に登場している。
 中でも教師・学習者のデータ蓄積により、すべての人に個別最適な学習プログラムが提供可能になったことがEdTechにおいて最新の変化である。

Smart Education戦略

 NTTコミュニケーションズのSmart Education推進室担当課長の稲田友氏はこう語る。
「教育分野のDXに対して、NTTコミュニケーションズはクラウド型教育プラットフォーム『まなびポケット』などを通じて学校DXの実現を目指しています。
 現在、政府のGIGAスクール構想でタブレット端末が配備されましたが、ドリルや映像授業に関するコンテンツ普及は発展途上です。そこで「学び」に必要なコンテンツを提供するのが定額制コンテンツサービス「まなホーダイ」のコンセプトです。
 既に東京都小金井市では、「まなホーダイ」を利用して頂き東京学芸大学・東京都小金井市・NTTコミュニケーションズの産官学で連携協定を締結して個別最適化された深い学習の実現を通じて学びのDXを推進しています。

医療ヘルスケア産業の3つの課題

 人生100年時代の超高齢社会に突入し、「健康寿命の延伸」が重要な政策課題となっている。医療・ヘルスケア産業は、予防や健康管理、医療・介護技術の進化、生活支援サービスの充実が望まれ、マーケットは大きく拡大することが予測されている。
 そんな中、医療・ヘルスケア産業の背景となる課題として以下の3つがあげられる。
課題① 少子高齢化に伴う需給ギャップ
高齢化率が高まるに伴い、医療・介護需要の拡大と社会保障費(年金・医療・介護など)が増大している。また、少子化による労働力の低下に伴い、財源となる経済活動の停滞も予測される。
課題② 医療・介護現場の人材不足
同じく少子高齢化の進行により、人手不足も進行している。以前より医師の長時間労働、過労死といった社会的な問題に加え、慢性的な介護現場の人手不足があり、生産性向上、働き方改革が求められている。
課題③ Covid-19による医療崩壊の危機
新型コロナウイルス感染症拡大により、緊急事態宣言が出されている13都府県のすべてで病床使用率が50%を超え(2021/8/20)、自宅療養者は1万4000人を超えた。
必要な人が広く検査や治療を受けられること、迅速にデータを収集・解析することの重要性・緊急性が叫ばれている。
〈参考〉健康寿命の延伸に向けたヘルスケア産業の創出|経済産業省, ヘルスケア産業政策について|経済産業省, 次世代ヘルスケア|成長戦略ポータルサイト, 社説:医療崩壊の危機|2021年8月20日|毎日新聞

医療ヘルスケア産業のDXの鍵とは

 医療・ヘルスケアの分野は、社会や産業全体のDX推進の最重要分野です。
 なぜならパーソナルデータを用いたユーザー体験の革新が鍵を握るこれからのDXにおいて、「健康」は万人に訴求する信頼のあるデータ活用の基盤になるからです。
 健康寿命が世界トップレベルにある日本が蓄積してきた健康診断のデータは、病気になるまえの情報が膨大に蓄積しています。
 “一人ひとりが魅力的な生活をおくる中で自然に健康になる”ための手がかりがあるでしょう。日本のデータを適切につなぐことができれば、世界的にみても豊かなソリューションを生み出すポテンシャルがあります。
 さらに新型コロナウイルスの影響で、世界中で遠隔医療が広がり、スマートフォンやIoTを活用することで、様々なデータが医療・ヘルスケアに活用できるようになっています。
 スマートフォンを軸に人々が自分の情報にアクセスするニーズが高まったことで、データプライバシーを巡る状況も変わりつつあります。ワクチンの接種履歴やPCRの検査証明を個人が自分で持つことは、人々を軸としたデータ活用の新しい流れがうまれるかもしれません。
 こうしたパーソナルデータを活用することで、これまでの「集団平均」をとらえた標準的なサービスから「個別最適」の医療へと変わっていくでしょう。抗がん剤治療を行う時、その治療が有効かどうかのゲノム分析はすでに活用されています。
 今後は更なるデータ活用を進めることで、同じ人でもどのタイミングで、どこで、どのような治療を受けることが最善なのか?というアドバイスを受けることが可能になるでしょう。テクノロジーを活用した個別最適化は、医療だけでなく介護や予防にも有効であるはずです。
「デジタルを使えないこと」は「未来から取り残されること」と同義となった今こそ、医療・ヘルスケア分野を軸にパーソナルデータを活用したDXに本気で取り組むべきタイミングです。

医療ヘルスケア業界のDXトレンド

 スマホやウェアラブル機器による生体データの収集などが本格的な普及期に入り、データ利活用の基盤をどう構築するかが社会的にも産業的にも鍵となっている。
 グローバルでは、GoogleやApple、アリババなどのテックジャイアントが、ヘルステックへ莫大な先行投資を続け、米国では年間5兆円以上の投資(NVCA)となっている。
・医療・介護・ヘルスケアの基盤となるデータ利活用
乳幼期・幼少期から学童期、成人、高齢期に至るまでのデータを一元管理し、予防医療や医療全体の評価に役立てられる「ライフコースデータ」の必要性が求められている。
一部、個人の医療・介護・健康データを、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)として、本人の同意の下で様々なサービスに活用することが可能になってきている。
・ICT、ロボット、AI等の医療・介護現場での技術活用
「電子カルテ」や「オンライン診療」や、MRI、CTなど様々な画像診断にAIを活用する「AI画像診断」。診断の自動化や、手術の支援、遠隔手術などに用いられる「医療用ロボット」など様々なテクノロジーが、医療の生産性や質の向上に貢献し始めている。
・ヘルステックベンチャーの興隆
東京のヘルスケア業界への投資額は、2020年には10億ドル以上にのぼる。遺伝子を操作する「ゲノミクス」や新薬開発にかかるコストを機械学習で劇的に縮める「AI創薬」、スマホやウェアラブルデバイスで得られたデータを活用する「デジタル治療」など、様々なサービスや技術が生まれている。
〈参考〉ICT利活用の促進|医療・介護・健康分野の情報化推進|総務省, デジタル治療レポート|SPEEDA, Society 5.0 時代のヘルスケアⅡ|日本経済団体連合会, 新生ユニコーンの半数以上がヘルステック企業に。次代のトレンド、8社へ熱視線 | Business Insider Japan

Smart Healthcare戦略

 NTTコミュニケーションズのSmart Healthcare推進室室長の久野誠史氏はこう語る。
「日本の医療・ヘルスケアを取り巻く社会的課題を解決することを目的として、予防・治療・ケアにいたる各ステージにおいてデータを収集・蓄積、さらに分析・活用することで新たなヘルスケアサービスの提供を目指しています。
 しかし、医療・ヘルスケアのデータについては保管が不揃いであったり、一部は要配慮個人情報として、安全かつ厳格に扱う必要があり、利活用が進んでいないのが実態です。
 この障壁を越え個人に適した医療や介護を実現するために、データを安心して保管できる仕組み、同意取得管理や秘密計算などの機能を持つプラットフォームを準備しています。
 具体例として、紙ベースの患者報告による非効率を解消するため、患者報告(PRO)をSmart PROとして電子化を進めています」
「他にも2つのユースケース開発を進めています。
 1つ目が健康診断データを活用した健康増進への活用で、2つ目が病気回復後のリハビリ状況の可視化による、早期受診や再発の予防です。
 これらの取り組みのような個人の医療ヘルスケアデータを統合して利活用を進める。この活動を通して、個人の健康に寄与し、社会的課題を解決することを目指して取り組んでいます」

製造業が抱える3つの課題

 コロナ禍の影響を受け、製造業各企業の売上高、営業利益は引き続き減少傾向にある。今後3年間の見通しも依然として先行き不透明な状況に、設備投資額の減少が続いている。
 右肩下がりの中で、以下のような3つの課題がある。
課題① 人材の不足
従来から人材の減少が続くなか、量だけでなく質的にも、DXまわりの技術者が圧倒的に不足している。
国内の製造業就業者数については、2002年の1202万人から2020年には1045万人と、約20年間で157万人減少し、全産業に占める製造業就業者の割合も減少傾向。また、若年就業者数も、2002年の384万人から2020年の259万人へと、約20年間で3割以上(125万人)減少した。
課題② グローバルサプライチェーンの分断
サプライチェーンへの被害は、従来は自然災害によるものが中心だったが、2021年にはCovid-19が世界全体に予測不可能な形で被害をもたらした。
需要減・受注減に加え、調達、物流などのサプライチェーンの支障を回避するために、調達先の分散など、多面的なリスクに対するBCP(事業継続計画)の策定が求められる。
課題③ 環境負荷
年々深刻になる環境問題に対し、国内の製造業はこれまでも地球温暖化対策を実施。この結果、産業部門のエネルギー起源CO2排出量は2019年度に2013年度比で17.0%の削減し、2030年度の目標を達成した。
世界各国がカーボンニュートラルに舵を切る中で、日本も2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言した。
〈参考〉労働力調査2021年7月|総務省統計局, 2021年ものづくり白書|経済産業省, 2019年度の温室効果ガス排出量(確報値)について|国立環境研究所

製造業のDXの鍵とは

 製造業の課題としてあげている点は、すべてチャンスとも読み替えることができます。
 製造業の就業者数の減少については、日本だけの現象ではなく、他国においても一貫して起こっていること。これは、ある意味デジタルや自動化の成果とも読み取れます。
 付加価値の創出は、製造業が持つ顧客接点を活用できれば、今までとはまったく違う収益を上げることも可能です。Googleが、直接のユーザー以外から収益を上げるモデルを確立したことこそが、注目すべきであり、ソフトかハードかではありません。
 サプライチェーンも環境の問題も、データ活用による現況の見える化により、劇的に改善が進む。問題の理由がわかれば、問題の8割は解決したことになります。
 それらが見えてきた段階で、製造業は、製造業の括りを超えていくことになる。製造業という分類は今後意味がなくなっていくのです。
 これらの変化を起こすためには、過去10年のプラットフォームモデルの根源にある、スケールフリーネットワーク を理解することが大切です。
 これは即ち人類の繁栄の根源の理由に迫ることであり、人のことが理解できない企業に未来は開けないでしょう。
※スケールフリーネットワーク:分布に特徴的な尺度(スケール)がなくべき乗則に従うネットワークのこと

製造業のDXトレンド

 ドイツ政府のテクノロジー戦略「インダストリー4.0」に端を発した、製造現場の高度な自動化・自律化を実現する「スマートファクトリー」が大きなトレンドになっている。
中でも、IBMが製造業界のDXについて調査したレポート「2021 Digital Transformation Assessment」によると、テクノロジーの利用ケースとして重要視されている項目のランキングでは、以下があがった。
「サイバーセキュリティ」92%
「予測的/処方的アナリティクスを含む高度データ分析」90%
「オートメーション/ロボティクス」85%
「デバイスからのIIoT/IoTデータ」83%
「人工知能(AI)と機械学習(ML)」77%
「コンピュータービジョン」77%
「自律型システム」73%
「AV・VR・MR」71%


〈出典〉The Manufacturer 「2021 Digital Transformation Assessment: Covid-19: A Catalyst for Change」

Smart Factory戦略

  NTTコミュニケーションズのSmart Factory推進室長 赤堀英明氏はこう語る。
「NTTコミュニケーションズではかねてより、製造業のDXに注力してきました。
 労働人口減少、環境資源問題、Covid-19等のパンデミックといった様々な社会課題に対し、また日本の製造業がグローバルな競争環境の中で世界に伍していくために、業界全体の底上げに注力して取り組んでいます。
 具体的には、NTTコミュニケーションズの強みである“つなぐ”を起点とした『業界協調型デジタルプラットフォーム』です。
 製造業界共通の業務を、個社ごとではなく業界全体でデジタル化・ユーティリティ化します。それによって個社の競争力に直結する業務へとリソースシフトを目指し、労働人口減少といった社会課題やグローバルサプライチェーンの分断といった課題に対応していきます。
 また、『業界協調型デジタルプラットフォーム』では、CO2削減といったカーボンニュートラルの取り組みを導入し、環境資源問題にも貢献しています。近年では、サーキュラーエコノミーの資源循環に関する取り組みも強化しています。
 一方で、共通基盤というとセキュリティ面の懸念もあるかと思いますが、安心・安全にデータを流通させる『withTrust™』手法を取り入れ、業界・国境を越えたデータ共有や活用による技術革新、生産性向上、技能継承に貢献しています。
 個社の競争力に直結するコアコンピタンス領域においても、NTTグループが取り組んできたAIやデータ分析、DXソリューションの知見と、お客様のドメイン知識を掛け合わせることで、製造現場の様々な課題を解決し、新たな価値創造を支援しております。
「具体的なソリューションとしては、設計データと製造リソースのマッチングやオープンデータの活用による調達支援を行う『デジタルマッチングプラットフォーム』や、工場内で発生するデータをAIで解析する『Digital Twin/Analytics』、組立や加工に携わる製造業をIoT等で支援する『組立加工DX』、高信頼・高品質でありエッジコンピューティングとも親和性の高い『ローカル5G』などがあります。
 下記では、横河ソリューションサービス様との『AIによる化学プラントの自動運転』事例をご紹介します。」

DXからIXへ至る道

 IXに至るには、“本棚にない本を探す”という発想が大事です。
 ここで“本”と言っているのはデジタルツールのことで、クラウド上で提供されるSaaSが典型です。デジタルツールで使えるものは、自前で開発せずに、出来合いのものを使ってしまう。そしてどうしても作らざるを得ないものだけをツールとして開発する、そのことを指しています。
 すると3つのことが起きます。
 1つ、自社のビジネスを他社・他業種と共通するレイヤーに分解して理解するようになります。そうすることで、自分の会社のビジネスを独自の1つの塊としてだけ理解する発想、自前主義や特定ベンダー依存の呪縛から逃れることができる。
 2つ、“本棚にない本”を見つけて開発することができれば、それは他社でも使われるので、あなたの会社は『プラットフォーマー』になる。(あるいは協調領域として各社から切り出すやり方もあるかもしれません)
 3つ、そのツールは多くの場合他の業種でも使えるので、産業のかたちそのものを変えることになる。
 それがIXに至るということなのです。
 アフターデジタルの競争は、新たな“本棚にない本”を探し、他社のレイヤーの上に別のレイヤーを提案し載せて付加価値を作る、というかたちで起きることを理解すべきです。
 多くの日本企業がコロナ禍で横割りのコラボレーションツールを使い始めたことは、この動きの入り口に立ったともいえ、このチャンスを生かすべきでしょう。