[ワシントン 16日 ロイター] - 世界銀行は16日、ビジネス環境の国別ランキングを示し注目度の高い年次報告書「ビジネス環境の現状(Doing Business)」の発刊を取りやめると発表した。2017年発行の報告書で、当時のゲオルギエワ最高経営責任者(CEO)ら上層部が中国のランクを引き上げるよう職員に「不当な圧力」をかけていたことが外部調査で判明した。

調査は世銀倫理委員会の委託で法律事務所ウィルマーヘイルが実施。世銀での中国の影響力や、現国際通貨基金(IMF)専務理事のゲオルギエワ氏および当時世銀総裁だったジム・ヨン・キム氏らの判断に懸念を生じさせる結果となった。

世銀は声明を発表し、内部監査と外部調査で「元理事や現・元職員の行動に倫理的問題」が指摘されたため、今回の決定に至ったとした。

ゲオルギエワ氏は、調査結果と解釈に根本的に同意できないと反論し、IMF理事会に説明を行ったことを明らかにした。

世銀とIMFへの出資を管理する米財務省は、調査報告書で指摘された「重大な結果」について分析していると述べた。

報告書では、当時のキム総裁の周辺から中国のスコアを上げるために報告書の方法を変更するよう「直接的および間接的な圧力」があり、これはキム氏の指示によるものだった可能性が高いと指摘した。

キム氏はコメントの要請に応じていない。

報告書によると、ゲオルギエワ氏らからも、中国のデータに具体的な変更を加えてランキングを上げるよう圧力がかかったという。

これは、世銀が中国に対し大規模な増資への支援を求めていた時期と重なる。

17年10月に発行された年次報告書における中国の順位は、データ手法の変更後、草稿に比べて7位上昇し78位となっていた。

報告書では、世銀幹部が当時、予想より低い順位に対する中国の失望と大規模な増資を巡る交渉に奔走していたと指摘。

ゲオルギエワ氏はウィルマーヘイルの調査担当者に対し、「多国間主義が懸かっていた。目標を達成できなければ世銀は深刻な問題に陥っていた」と説明したという。

世銀は18年に130億ドルの増資を発表。増資後、国際復興開発銀行(IBRD)における中国の投票権は4.68%から6.01%に上昇した。