[東京 8日 ロイター] - 自民党総裁選に出馬表明している岸田文雄前政調会長は8日午前、自身の経済政策に関する記者会見で、小泉改革以降の新自由主義の是正を掲げ、分配を重視した日本型資本主義を構築すると表明した。

<金融所得税制を見直す、物価目標「変えない」>

岸田氏は成長なくして分配なしと指摘しつつ、分配なくしては消費需要も盛り上がらず、経済成長も実現できないと強調した。

マクロ政策では大胆な金融緩和、財政出動、成長戦略によるデフレ脱却を最優先に掲げるとして、アベノミクスの継承を主張した。財政は国の信用の礎と指摘し、財政再建重視の姿勢を示しながら、経済成長をより重視するとも述べた。

2%物価目標は世界標準だとし、「変えるつもりはない。変えるとおかしなメッセージになる」と指摘した。

格差拡大で国民が分断されることに懸念を示し、「国民の一体感を取り戻す点で、金融所得税制を考え直す必要がある」と述べた。

消費税については「減税・増税ともに与しない」と述べ、現状維持の方針を示した。

<既存原発再稼働、原子力技術・人材維持も重要>

原発の新増設には慎重な姿勢を示しつつ、既存原発の再稼働を進める姿勢を示した。原子力技術や人材維持の重要性も強調した。

科学技術投資拡充のため、10兆円規模の大学ファンドを年度内に設置する構想も明らかにした。 

成長戦略として、科学技術立国、経済安全保障推進法の策定と専任大臣の設置などのテーマを掲げた。

分配政策として、1)下請けいじめ防止、2)子育てを支援のための住居・教育費支援、3)看護師・保育士などの賃金引き上げを促す公的価格の見直し、4)財政単年度主義の弊害是正━━を掲げた。

安倍晋三前政権の評価を問われ、「日米同盟強化をはじめ評価すべき点が多い」としつつ、成長の果実がさまざまな階層に均霑(きんてん)する「トリクルダウンは起きていない」と述べ、分配重視の必要性をあらためて強調した。