中国「共同富裕」に向けアリババ1.7兆円投入へ 指導部に追従
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「共同富裕」の全体像が見えてきました。「寄付」という形をとりながら、事実上の富の再分配を進める動きは今後も広がる可能性があります。この手法は重慶市書記で実刑判決を受けた薄熙来氏が暴力団一掃キャンペーン「打黒」運動の一環で企業経営者らの資産没収するやり方を彷彿とさせます。薄氏は1兆円以上の企業の資金を集めて市民に再分配することで市民の人気を集めました。今後、日本企業を含めた外資への影響が懸念されます。
1.7兆円、人民元だと1000億元ということでキリがいいのですが、具体的に何に使うのかというと、本拠地である浙江省を中心に、農村や老人、若者の支援をするそうです。
同様の共同富裕を目的とした基金は、テンセントも1500億元で設立すると発表しています(最初は500億、追加で1000億)。
一方で、吉利汽車は、社員に対して自社株を交付するという、大規模なストックオプションというか社員持ち株制度の方針を発表していて、これが同社の共同富裕への貢献であるとしています。
アリババにはおよびませんが、農村部で強い新興eコマースの拼多多は、100億元出すといっています。
こうなると、大小の中国企業は、多かれ少なかれ、共同富裕のために供出せざるをえないでしょう。日系企業を含む外国企業も、率先して供出するのが今後のため、ということになるでしょう。
中国で、所得の格差が広がっているのは事実で、その是正を放置すれば深刻な社会問題になることは間違いありません。農村の所得向上は、格差是正に必要なことです。
最も深刻なのは高齢者の急増、医療と福祉でしょう。そういう社会問題のために、巨額の社会保障、インフラの整備、富の再配分が必要、というのは妥当な方針でしょう。
しかし、再配分は、税制や年金制度の大改革、医療保険、介護保険の整備によって達成されるべきです。こんな企業を叩いて吐き出させるようなやり方に持続性があるはずがありません。
所得税や法人税、固定資産税、そして相続税の抜本的な改革に踏み出せない、政治的な理由があるのでしょう。中国は、公的年金の積立金だけでも、現状は破綻が確実視されていて、抜本的改革が急務のはずです。中国政府は強権的なようで、そういう国民の家計を減らすような政策は、リスクが大きすぎてできないようです。
Explainer: What is China's 'common prosperity' drive and why does it matter?
https://www.reuters.com/world/china/what-is-chinas-common-prosperity-drive-why-does-it-matter-2021-09-02/米国では社会主義の復活として極めてネガティブに見られています。米国上場の中国企業の株価指数ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は8月下旬に3月の高値の半分になりました。しかし、共同富裕は、上手くやれば米国や日本が実現出来ていない格差是正になります。習近平の目的は2022年の共産党大会で異例の3期目に入るための民衆の支持です。共同富裕に対する民衆の支持は高く、米国のネゲティブな見方とは反対に、ある程度は上手く行き始めている面があります。そして、ここ1週間でゴールデンドラゴンチャイナ指数が20%を超え急反発しているのです。米国が中国を正反対意に見誤るのは、政治だけでなく金融にも当てはまりますね。会社でレポートをまとめたのでご参考にどうぞ。
https://www.resona-am.co.jp/oshirase/2021/pdf/210902_m.pdf