[ワシントン 25日 ロイター] - 米ホワイトハウスは25日に開催したテクノロジー・金融・インフラ企業幹部との会合で、サイバーセキュリティー面で米経済に対する脅威が高まっているとして一段の対策を求めた。

テクノロジー供給網のセキュリティー向上に向けた新指針を策定するため業界と連携する考えも示した。

バイデン大統領は閣僚らとともに会合を開き、企業幹部に対し「連邦政府だけではこの課題に対処できない。われわれにはやるべきことが多くある」と語った。また「あなた方にはサイバーセキュリティーのレベルを高める能力と責任がある」と訴えた。

ホワイトハウスは会合後、米国立標準技術研究所(NIST)が業界などと連携し、安全なテクノロジー構築や安全性評価などの新たな指針を策定すると発表。

マイクロソフト、グーグル、保険大手トラベラーズ、サイバー保険を手掛けるコアリションなどが、NIST主導の新たな構想に参加する方針を示した。

米国ではネットワーク管理ソフト会社ソーラーウインズや石油パイプライン大手コロニアル・パイプライン、食肉加工大手JBS、ソフト会社カセヤを標的とするサイバー攻撃が相次いで発生。被害に直接あった企業だけでなく、一部地域の燃料や食品の供給にも影響が広がり、サイバーセキュリティーがバイデン政権の最優先課題となっている。

バイデン氏は、ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)による攻撃に言及し、ロシアのプーチン大統領に同国を拠点とするハッカー集団の責任を追及するよう求めたことを明らかにした。

会合にはアマゾン・ドット・コムのジャシー最高経営責任者(CEO)、アップルのクックCEO、マイクロソフトのナデラCEO、グーグル親会社アルファベットのピチャイCEO、IBMのクリシュナCEOらが参加した。

アマゾンは会合後、サイバーセキュリティーに関するトレーニングを無料で一般公開するほか、一部のクラウドコンピューティング顧客に多要素認証デバイスを提供すると発表した。

プレスリリースによると、これらの取り組みは「サイバーセキュリティーを巡る脅威の高まりから組織や個人を守る」ことが目的で、10月から開始するという。

マイクロソフトは5年間で200億ドルと現在の4倍のペースで投資を行い、サイバーセキュリティー対策を加速させるほか、連邦政府、州政府、地方自治体のセキュリティーシステムを最新の状態に保つための技術サービスに1億5000万ドルを提供する方針を示した。

IBMは3年間で15万人超にサイバーセキュリティー関連の技術を習得させるとともに、歴史的に黒人の多い大学と提携して同分野の人材の多様化を目指すという。サイバー攻撃に遭った企業のより迅速な復旧を支援するため、新たなデータストレージ技術を開発していることも明らかにした。

グーグルは今後5年間でサイバーセキュリティー分野に100億ドルを投じるとしたが、これに新たな支出が含まれているのかどうかは不明。

レジリエンス・サイバー・インシュアランス・ソリューションズのハリプラサドCEOはロイターに対し、政府と協力してサイバーセキュリティーに関する明確な基準を設定し、保険契約者にその基準を満たすよう義務付ける考えを示した。

会合には電力会社サザンや金融大手JPモルガン・チェースの幹部も加わった。

政権側からは国家サイバー・ディレクターのクリス・イングリス氏やアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官らが出席した。