[20日 ロイター] - 米カンザスシティー地区連銀は20日、ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムについて、対面形式ではなく、オンライン形式で8月27日に開催すると発表した。新型コロナウイルスのデルタ株拡大が連邦準備理事会(FRB)の計画に影響していることが示された。

カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は声明で、地元ティトン郡でこのところ新型コロナのリスクが高まっていることに言及し、「公衆衛生の状況により、計画通りに対面形式でジャクソン・レイク・ロッジに集うことができないのは残念だが、われわれは参加者と地元地域の安全を最優先する」とした。

FRBは19日、パウエル議長はジャクソンホールには赴かず、オンライン形式で経済見通しに関する講演を行うと発表していたが、20日時点で、数人の地区連銀総裁が対面形式での会議に出席を予定していた。

パウエル議長や他のFRB当局者は、デルタ株による経済全般への影響をさほど重大視してこなかったが、ジャクソンホール会議を巡る方針転換はFRBのこうした見解に疑問を投げかける。

イエール大学経営大学院のスティーブン・ケリー氏は、パウエル議長がオンラインのみで講演しつつ、足元の感染拡大の影響は軽微という見解を維持するのは「間違いなくコミュニケーション上の課題になる」と指摘した。

グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「(オンラインへの切り替えを受けて)パウエル氏の経済見通しに関するコメントの方向性がややシフトしたのではないか」とツイートした。

FRB当局者は、労働市場の改善が予想通り進めば年内にも景気支援の縮小に着手する計画でまとまりつつあるものの、デルタ株の拡大で不透明感も生じている。

10月のテーパリング(量的緩和の縮小)開始を支持するダラス地区連銀のカプラン総裁は20日、デルタ株が経済に与える影響を注視しており、経済成長が大幅に鈍化するようであれば、金融政策に関する自身の見解を「多少」調整することもあり得るという考えを示した。

FRB当局者は現在の感染拡大が景気回復を腰折れさせるとはみていないものの、エコノミストは成長見通しを小幅に引き下げ始めている。

ゴールドマン・サックスのエコノミストは19日、「デルタ株による成長やインフレへの影響はわれわれの想定より幾分大きい」として、今年の米経済成長見通しを6.4%から6%に下方修正した。

航空機の利用やレストランでの飲食にも減速の可能性が表れ始めている。

バンク・オブ・アメリカのエコノミストは、娯楽分野へのクレジットカード支出がこのところ減少していると指摘した。