[ワシントン 18日 ロイター] - 米政府は18日、感染力の強い新型コロナ変異ウイルス「デルタ株」のまん延を受け、9月20日からファイザー・モデルナ製ワクチンの追加接種(ブースター接種)を開始すると発表した。

少なくとも8カ月前に接種を完了した人が対象で、主に医療従事者や福祉施設の入所者、高齢者への接種を優先する。

保健当局は共同声明で、現在米国で承認されているコロナワクチンの有効性が接種後数カ月で低下し始めることを踏まえ、今回の決定を下したと説明。「これまでのデータから、コロナ感染への予防効果は時間の経過とともに低下することが明白で、デルタ変異株に関しても、軽症および中等症に対する予防効果が低下している」とした上で、「ワクチンによる予防効果を最大限に発揮させ、その持続性を高めるためにはブースター注射が必要」と結論づけた。

バイデン大統領は「今後出現する可能性のある新たな変異株から身を守るには追加接種が最善の方法だ」とし、「より長期にわたり身を守ることができる。パンデミック(世界的大流行)の早期終息につながる」と訴えた。

その上で、全米約8万カ所で1億回分の追加接種を無料で提供するとの見通しを示した。

米疾病対策センター(CDC)のワレンスキー所長は、国内の福祉施設を対象とした研究で、デルタ株に対するワクチン効果が53%に低下したと述べ、追加接種の必要性を訴えた。またイスラエルの研究では、早期にワクチンを接種した人が重症化するリスクが高まっているとも指摘した。

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は記者団に対し「ウイルスに先んじて対応したい」と表明。「もし何か悪いことが起こるのを待ってから対応すれば、実際の対応能力でかなり後れを取ることになる」と述べた。

米食品医薬品局(FDA)は今月に入り、ファイザーやモデルナ製のワクチンについて、免疫力が低下している人を対象に3回目の接種を承認したばかり。当局は1回の接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンについても、追加接種が必要になるとの見方を示した。

追加接種を巡っては、イスラエル、フランス、ドイツなどが高齢者や免疫力の弱い人に追加接種を行う判断を下している。

米国では、デルタ変異型のまん延に伴い、7月上旬には1万人に満たなかった1日当たりの感染者数が、8月には15万人以上に急増した。

こうした中、世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、貧困国でまだ初回接種を受けていない人々にまずワクチンを提供すべきと主張。「すでに救命胴衣を持っている人に余分な救命胴衣を配る一方で、救命胴衣を一着も持たずに溺れている人を放置している。これが現実だ」と批判した。

これに対しバイデン氏は、米政権は何カ月も前から追加接種を計画してきたとし、今回の決定によって、今後数カ月間で約2億回に上る海外向けワクチン寄付が縮小することはないと強調した。