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注目のコメント
入山章栄です。この記事は私への取材と拙著「世界標準の経営理論」がほぼ基になっているのですが、配信前に私のチェックができていませんでした。編集部に敬意を払いつつ、補足させてください。
1)冒頭に「経営理論は役に立つ」とありますが、理論は世界の経営学者が、ビジネスの本質を解き明かすために研究で使う道具にすぎません。それを実際のビジネスに応用すれば「役に立つ」というのはやや大袈裟です。ただ私自身は「思考の軸・羅針盤」にはなり得る、といっています。これからの正解のない世界では、誰もが考え続けて行かなければならない。その時に理論は「自分が直面しているビジネス事象はこういう説明の仕方もできるかも」などと一定の角度で論理的に切り取り、考えを深めたり広げる「軸」としては大いに使えるはずだからです。
2) 「経営理論=万国共通の言語」も大袈裟です。海外のトップスクールでMBAをとっている方でも、経営理論などほぼ知りません(笑)。私が言いたかったのは、仕事で異業種の人と話すと現場用語ばかり使うから互いに話が噛み合わない。だけど理論は「究極の抽象化」なので、違う現場・違う業界に属していても、互いに抽象化して話すので本質的な共通項が見つけやすいということです。「世界標準の経営理論」を読んだら、その後で異業種の方と語り合うことを私は強く勧めています。
3) 選ばれた10の理論も、私の取材を受けて編集部が決めたもので、完璧ではありません。まずレッドクイーン理論はそれほどメジャーな理論ではありません。ただ私自身は日本のビジネスの現状を理解する上で重要と考えているので、拙著で紹介しました。また「非市場理論」という理論は、そもそも存在しません。これは民間企業が政府などの非営利部門にアプローチする戦略の総称で、理論ではありません。「理論とは何か」は、拙著の序盤をお読みください。
4) このように修正したいことは多々あるのですが、皆さんに経営理論に関心を持っていただくきっかけとしては、このNP記事で十分と思います。特に、理論を「競争に勝つ」「勝ち続ける」などの枠組みで整理した編集部の工夫は素晴らしいですね。より詳しくは、「世界標準の経営理論」を手にとってみてください。世界の近代経営理論をほぼ完全にまとめた本は、おそらくこれしかありません。加えて琴坂くんの「経営戦略原論」もお薦めです。私たちが、勝手に「金言の湯」、または「金言シャワー」と呼んでいる課題があります。
多くの記事において、名経営者が語る名言は、感動するし、腹落ちします。
ところが、「それって、どんな企業にも広く参考にできるの」というと、スーパー経営者による再現性のないスーパープレーであったりします。
スポーツで例えると、野球なら逆転ホームラン、サッカーなら5人抜きのゴール、テニスなら窮地から逆転スーパーショットでしょうか。
現実のスポーツはもっと地味です。エラーがないなど、守備の基礎レベルが高い。
本当に記事の中身が広く参考になるべく、再現性や反証可能性のあるものとして世に問うていかなければ。
そうした問題意識もあり、今回、金言の湯を出て、経営理論へと踏み込みたいと思います。変化の激しい時代において、経営理論は役に立たない? いや、むしろ不透明な時代にこそ、普遍的な理論が、意思決定の質を高めるーー。そんなコンセプトで、今日から5日連続で、【「経営理論」夏季講習】をお届けします。
1回目の今回は、わかりやすい図解で、おなじみのポーターのSCP理論やリソースベースドビューに加えて、「知の探索・知の深化」、「リアルオプション理論」などVUCA時代にこそ役立つ10の経営理論を厳選、組織経営だけではなく個人のキャリア形成にもすぐに応用できる方策も示しました。
個人的に、経営理論と学ぶ意義は、経営の定石を知ることで、方策のパターン化ができることに加え、自分の感情(好き嫌い)や思い込みによる決断を避けやすくなる効果が大きいと思います。
ステイホームの夏にぴったりの、学び満載の特集です。どうぞ、よろしくお願い致します。