日焼け止め製品に発がん性物質の恐れ、研究者がFDAに販売中止要求
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多くの日焼け止めの有効成分として配合している「オクトクリレン」は「ベンゾフェノン」骨格を有する化合物です。研究者らはFDA(米国食品医薬品局)に対し、(分解されてできると思われる)「ベンゾフェノン」が含まれている可能性があると指摘しています。そして、「ベンゾフェノン」は、発がん性の危険性があるため、「オクトクレリン」含有の日焼け止めを回収するように要望しています。
確かに、「ベンゾフェノン」の発がん性について、日本の厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」にも、以下のように紹介されています。
(ベンゾフェノンの発がん性)ラットを用いた二年間経口投与試験で、「尿細管腺腫、白血病が発生した」(NTP DB(Access on September 2008))旨の記述と、マウスを用いた二年間経口投与試験で「肝細胞がん、肉腫が発生した」(NTP DB(Access on September 2008))旨の記述がある。NTP DB (Access on September 2008)では、「本物質が雄ラット、雌雄マウスで発がんするというある程度の証拠、雌ラットが発がんするというあいまいな証拠がある」と結論づけていることから、区分2とした。 なお、主要な国際的評価機関による評価はなされていない。
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/119-61-9.html
「ベンゾフェノン」の発がん性疑いは、長期経口摂取の動物で発現しているようですが、皮膚からも吸収されるという研究結果もあるようですので、危険性がないとは言えないと推測できます。
しかしながら「オクトクレリン」は、紫外線を吸収するという特徴があり、白色人種に特に多く発生する「皮膚がん」を抑制するために効果的な物質です。他の紫外線吸収物質としては「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」が知られるようではありますが、完全に代替できないのであれば、「オクトクレリン」には必要性があり、その外用を直ちに禁止できるほどの根拠はないと思われます。
このような状況から、FDAは「米消費者にとって安全な日焼け止めが入手可能な状況を確実にするため、日焼け止め市場の監視を続ける」と回答しているのだと思われます。記事とあわせて現時点で得られる情報の限りでは「過剰な警戒」であろうと推測します。オクトクレリンか。あんまり聞かない成分だけど、調べてみよう。
追記
紫外線吸収剤だな。日焼け止めとして用いるほか、他に入れた日焼け止め成分の安定や、製品の変色を期待して配合することもあるようだ。ケトプロフェン(「モーラス」の有効成分として有名)と併用すると光線過敏症の恐れが高まるため、使用は避けるべきとされている(1)。
また、ヨーロッパの機関の評価(2)によると、
・内分泌かく乱物質(環境ホルモン)としての作用はない
・オクトクレリン自体の経皮吸収率は非常に低い
・皮膚刺激性は低く、10%までなら安全性に問題はない
とされている。しかし、ここでの問題はオクトクレリン自体ではなく、オクトクレリンの分解産物として発生するベンゾフェノンである。ベンゾフェノンは経皮吸収率が高く、発がん性や内分泌かく乱作用があるため(3)販売中止にすべきという流れのようだ。
オクトクレリンからベンゾフェノンへの変換をしないような化粧品作りをするとヒトへのリスクは回避できるのだが、流れ出た成分による環境への負荷は避けらない。また、ケトプロフェンのように極めてよく使われている痛み止めの副作用リスクを増悪させるとなると、避けるべき成分だと思われる。
例示された製品の中には中国でも売れている製品があるな。アネッサがますます売れるようになるかもしれない。
参考文献
(1)厚生労働省:ケトプロフェン外用剤による光線過敏症に係る安全対策についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/276-1.pdf
(2)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdv.15945
(3)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.chemrestox.0c00461